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870メートル離れ被爆 体験記 広島の児玉さん 「核は非人道的凶器」

 爆心地から約870メートルで被爆した児玉光雄さん(81)=広島市南区=が、放射線の影響で今も異常を抱え続ける自身の染色体にまで踏み込んだ本「被爆者・ヒロシマからのメッセージ」を出版した。「70年近くたっても影響を与え続ける核が非人道的凶器であると訴えたい」と話している。

 当時は12歳。広島県立広島第一中(一中、現国泰寺高)の1年生だった。雑魚場町(現中区国泰寺町)にあった同校の木造校舎内で被爆した。300人余りいた同級生のうち、復学できたのは19人。現在生きているのは、児玉さんを含めて2人しかいない。

 児玉さんは、放射線影響研究所(南区)で自身の染色体について検査。2本の染色体が切断されて先端部分が入れ替わる「転座」が細胞1個当たり平均1個と、高頻度で起きていることが分かった。専門医からは「幹細胞が損傷を受けているため、一生涯回復の見込みはない」と告げられている、という。

 本では、染色体異常についてカラー写真で分かりやすく説明。児玉さんが浴びた放射線量は約4・6グレイと、半分の人が死亡する「半致死線量」とされる4グレイより多いとの推定結果も記している。また、転移ではなく、それぞれの臓器で別個に発がんする「重複がん」で、これまでに19回の手術を受けた体験や、生き残った19人で結婚した16人のうち、7人に子どもがいない事実にも触れている。

 児玉さんは「特に若い人たちに読んで知ってほしい」と話し、広島県内の図書館などへの寄贈を計画。同時に「現実を世界の人に伝えたい」と英訳出版も望んでいる。市の原爆死没者慰霊等事業の補助を受け500冊印刷した。B5判、176ページ。(二井理江)

(2014年3月24日朝刊掲載)

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