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「平和」壁画と原作画家対面 山形の被爆者三浦さん、おりづるタワーで 絵に署名 「核は一発も要らない」

 広島市で被爆した洋画家三浦恒祺(つねき)さん(93)=山形県鶴岡市=が10日、おりづるタワー(広島市中区)を訪れ、原爆による破壊と平和の願いをテーマに自らデザインした壁画と初めて対面した。絵に署名を入れ、「核兵器はこの世に一発も要らない」と作品に込めた願いを語った。

 三浦さんは旧制広陵中2年のとき、学徒動員で運搬の作業中に爆心地の北約4キロで被爆。戦後は両親の故郷の鶴岡市で暮らし、「原爆の形象」と題した連作の抽象画を描いてきた。

 壁画は縦約4メートル、横約24メートル。黒や赤、黄を基調にして原爆の閃光(せんこう)や火炎を思い起こさせる2枚の絵と、海に沈む夕日に希望を託した1枚を組み合わせている。三浦さんは新型コロナウイルス禍のため長く広島訪問がかなわず、原画を基に広島の美術仲間や学生が壁に描いた。

 三浦さんはこの日、壁画を眺めて「よく描いてくれました」と顔をほころばせた。「頭から足の先までやけどを負った被爆者のむごい姿は今も頭から離れない。こんな恐ろしいものは要らないと壁画が発信してほしい」と力を込めた。

 おりづるタワーは、展望台と地上を結ぶスロープを戦後100年への願いをテーマにした壁画で彩ろうと三浦さんを含む9人に制作を依頼。昨年4月に完成した。(水川恭輔)

(2023年6月11日朝刊掲載)

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