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広島の経験 共有大切 JICA田中理事長に聞く

 東京大副学長から国際協力機構(JICA)の理事長に就任して間もなく2年になる田中明彦氏(59)が広島市や東広島市を訪れた。途上国支援や平和構築を進める中、被爆地広島の持つ意味や広島大との連携について聞いた。(金山努)

 ―東広島市にあるJICA中国は、年350~500人の研修員を受け入れています。「広島」にどんな役割を期待しますか。
 広島の被爆から70年近くたち、途上国ではリアリティーがない方もいるんじゃないかと思う。核兵器が普通の兵器と変わらない、と思われてしまう可能性はある。できるだけ広島について認識してもらうべきだ。はっきりプログラムに入れないまでも、日本で研修すればおのずから、平和の重要さ、日本がどう考えているかが伝わる。紛争があったところから来た人に、広島が復興を遂げていったプロセスを見てもらうことも非常に大切だ。

 ―青年海外協力隊の隊員たちが現地で開く原爆展は2004年に始まり、100回を超えています。
 世界の人に原爆について知ってもらう意味ももちろんあるが、隊員がやってくれること自体にも意味がある。原爆や日本の国際的役割について、若者が考える機会になっている。

 ―広島大との連携をどう評価しますか。
 研修受け入れや専門家派遣をやっていただき、広範で長期にわたる有益な関係をつくれている。大学院に在籍しながら海外協力隊員として活動するザンビアプロジェクトは、連携のモデルケースとなっている。

 政府開発援助(ODA)をやっていくとコンサルタントのいる東京中心、現地での事業は大企業中心になりがち。ここ3年ぐらい、優れた技術を持つ中小企業に世界で活躍していただこうとしている。大学には仲介役やアドバイザー役になってほしいと考えている。

 ―平和構築に教育が果たす役割は。
 武装解除や経済状態の改善と合わせ、教育も一つの重要な手段だ。広島や長崎の経験を共有することは、その根幹となり得る。

たなか・あきひこ
 54年埼玉県生まれ。米マサチューセッツ工科大で博士号。東京大東洋文化研究所長、同副学長などを経て12年4月から現職。

(2014年3月24日朝刊掲載)

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