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トマホーク退役 「懸念」 政府側が米に伝達 「核の傘」固持狙う

■記者 金崎由美

 米国が巡航核ミサイル・トマホークを数年後から退役させる計画に対し、日本政府側が米側に「懸念」を伝えたとみられることが10日分かった。「核の傘」の弱体化を回避したい意向とみられ、核兵器廃絶を唱える被爆国が核軍縮を妨げる矛盾を浮き彫りにしている。

 米議会の諮問委員会「戦略態勢委員会」(委員長・ペリー元国防長官)は今年5月、米核戦略に関する最終報告書で「アジアの同盟国の一部が、巡航核ミサイルの退役を非常に憂慮している」と記述した。

 同委員会の審議過程に詳しい米国の安全保障専門家は中国新聞の取材に対し「同盟国とは日本だと複数の関係者が証言した。(2013年にも耐用年数が切れる)トマホークに特段の関心を表明したものだ」と解説する。

 委員会名簿には在米日本大使館の4人が「顧問」として名を連ねている。また最終報告書は、米政府が年末までにまとめる長期方針「核態勢の見直し(NPR)」に影響するとみられている。

 ウェブサイト「核情報」主宰の田窪雅文さん(58)は「日本政府が拡大抑止(核の傘)の有効性に疑心暗鬼になっている表れ」と分析。一方、外務省北米局は「米国の個別の核戦力に日本が意見を挟むことはない。わが国に重要なのは、究極的な核兵器廃絶目標と日本の安全保障との全体的なバランスだ」としている。

拡大抑止(核の傘)
 自国を守る「基本抑止」に対し、同盟国を他国の攻撃から守る概念。核戦力での抑止を「核の傘」と呼ぶ。日米安保条約の第5条は、日本有事の際には米国に防衛義務があると規定している。

(2009年7月11日朝刊掲載)

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