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[ヒロシマの空白] 供養塔遺骨 1002人目返還 2年ぶり 名簿見た遺族から連絡

 広島市中区の平和記念公園の原爆供養塔に安置されている1人の遺骨が遺族に返還されたことが14日、分かった。納骨名簿に「木村正男」と1字違いで記載されていた木村正夫さん。被爆78年を迎える中、遺族からの問い合わせで判明した。「約7万人」といわれる供養塔の遺骨が引き取られたのは2021年10月以来で1002人目となる。

 供養塔を管理する広島戦災供養会の畑口実会長(77)が5月9日、供養塔前で広島県内に住む木村さんの孫に遺骨を渡した。孫は涙を流して喜んだといい、畑口会長は「感慨無量の様子だった。遺族の手元に戻せて良かった。供養してきたかいがあった」と話している。

 市によると、木村さんは市中心部で建物疎開中に被爆死した。当時30代で広島地区特設警備隊に所属していたという。遺族側の意向として詳細を公表していない。

 木村さんのひ孫が22年8月、名前が分かっていながら引き取り手が見つからない供養塔の納骨名簿を確認し、「名前が1字違いだが、原爆で亡くなった曽祖父ではないだろうか」と市へ問い合わせた。名簿には「木村正男(陸軍雇員)」とだけ記されていた。

 市原爆被害対策部調査課は当時の陸軍や原爆死没者の名簿、遺族から提供された戸籍謄本を照合。本籍地や死亡時の年齢、死亡した場所が一致したため、木村さんと特定したという。

 市は近く納骨名簿から木村さんの名前を削除する。供養塔の遺骨のうち、遺族が判明したのは木村さんを含め1624人。うち引き取られたのは1002人で、ほかは遺族の希望でそのまま安置している。(宮野史康)

(2023年6月15日朝刊掲載)

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