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被爆の惨禍 ありありと  廿日市の西岡さん 体験記出版「恐ろしさ知って」

 広島県立広島工業学校(現県立広島工業高)1年の時に被爆した西岡誠吾さん(91)=廿日市市=が当時の体験を記した本「少年・十三歳の原爆体験記」を出版した。負傷した自身の姿や街の被害状況などを描いた26点の絵を載せ、被爆の惨禍をありありと伝える。

 西岡さんは爆心地から約2キロの学校で被爆し、顔や手足にやけどやけがを負った。その日は体調が悪く、広島市中心部での建物疎開作業を休んで校内で作業するために登校していた。同高の80年史によると、建物疎開作業に出た1年生をはじめ生徒・教職員計214人が原爆で犠牲になった。

 「丸裸の女学生が輪になって泣き叫んでいました」「川には、力尽きた人が次から次へと沢山(たくさん)流されていました」…。被爆時に見た市民の惨状を手記と絵で描写。倒れた校舎の柱で学友たちの慰霊碑を建てたことなども紹介し「核のない平和な世界を願っています」と結んでいる。

 西岡さんは、7年ほど前から被爆当時や戦時中の体験を絵と手記で書き残してきた。書籍化は、平和学習で生徒とともに西岡さんの証言を聴いた山陽高(西区)の図書職員小崎圭子さん(60)が提案し、出版作業にも携わった。山陽高1年松前雄翔(ゆうと)さん(15)と、原爆文学を研究する大学非常勤講師ウルシュラ・スティチェックさんが英語版の作成も進めている。

 西岡さんは「被爆時に見た『地獄』を描いていると寒気がしてきて、何度も筆を置きました。核兵器の恐ろしさを知ってほしい」と話す。完成済みの日本語版はインターネット通販「アマゾン」で購入できる。B5判33ページ。1320円。小崎さん☎070(5051)6065。(水川恭輔)

(2023年6月19日朝刊掲載)

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