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広めようアンネのバラ ホロコースト記念館・幸千中 世界会議福山大会へ機運

 「アンネの日記」の作者アンネ・フランクの父、オットーさんが日本に贈った「アンネのバラ」の普及に、福山市御幸町のホロコースト記念館と近くの幸千中が力を入れている。同館は2025年に市内である世界バラ会議福山大会のツアー候補地。「平和を願ったアンネの思いが広がれば」と国内外への発信を目指す。(原未緒)

 アンネのバラは、第2次世界大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺(ホロコースト)で犠牲になったアンネをしのんでベルギーの園芸家が開発し、1960年に名付けた。赤いつぼみが黄やサーモンピンクに色を変えながら咲く。自宅で育てていたオットーさんが72年から苗木を日本の教会に贈り、接ぎ木で全国に広がった。

 同館では95年から育て、地域の子どもたちでつくるボランティアグループが毎年接ぎ木の会に参加。これまでに同館が計約270団体に接ぎ木の苗を贈った。

 市世界バラ会議推進室によると、バラ研究者や生産者が集う同大会は期間中、県内のバラ園などを参加者が巡るツアーを予定。平和を訴えるアンネのバラがある同館は、ツアーの候補地になっている。

 同大会を前に地元の記念館のバラを校内や地域に根付かせようと、今年1月に幸千中の生徒会の10人が初めて同館の接ぎ木会に参加。接ぎ木した約30株を栽培し、今月、校内の専用花壇に植えた。今後は苗木の一部を地域の交流館などに配る予定だ。

 生徒会長の3年山元聡真さん(15)は「アンネの生涯やバラに込められた思いを知らない人も多い。まずは校内で知識を深め、学校の伝統としてバラを大切にしたい」。村上啓二校長は「生徒が平和について主体的に考える機会にしたい」と力を込める。

 同館の大塚信理事長(74)は現在、ドイツ・フランクフルトの日本人学校と協力し、アンネのバラを欧州で広げる活動に携わる。同校の岡裕人事務局長(61)は「ドイツでは、ホロコーストの歴史教育は進んでいてもアンネのバラはあまり知られていない。まずはドイツ国内の日本人学校で広めたい」と話す。

 2025年は同館の開館30周年と重なる。大塚理事長は「アンネの足跡をたどり、欧州のゆかりの地にバラを広げる活動ができれば」と話している。

(2023年6月19日朝刊掲載)

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