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連載・特集

21世紀・核時代 負の遺産 汚染・廃棄物…課題重く 旧ソ連・米国から報告

 「核の時代」と形容された二十世紀、核兵器製造過程や、「平和のための原子力」として開発が進んだ原子力発電所からは、膨大な量の放射性物質(廃棄物)が生み出された。こうした放射性物質は、兵器用プルトニウムや原発から出る使用済み核燃料として蓄積されるばかりでなく、核実験や核工場・原発事故などで広範に環境を汚染し、広島・長崎以後も多くのヒバクシャをつくり出した。放射性物質をどう安全に管理し、事故を防ぐか。それは核兵器廃絶と同じように、人類が直面する二十一世紀最大の課題の一つである。(編集委員・田城明)

 人類にとっての本格的な核時代は、科学者らが大学内での小規模な実験室の枠を越え、「巨大産業」へと変貌(ぼう)する第二次世界大戦中の米国の原爆製造計画「マンハッタン・プロジェクト」(一九四二―四五年)を契機に到来した。

 それから約六十年。半世紀近く続いた東西冷戦構造の中で、核超大国の米国とロシア(旧ソ連)は、合わせて千七百回以上の大気圏・地下核実験を繰り返し、熾烈(しれつ)な核軍拡競争を展開した。核保有国も英国、フランス、中国、さらにインド、パキスタンへと拡散した。

 八〇年代半ばのピーク時には、約七万個にも達した地球上の核兵器。冷戦崩壊後、米ロ間では、一定数の核弾頭の解体が進む。だが、そこから出る高濃縮プルトニウムやウランをどう安全に処理するか…。財政難に苦しむロシアにとって、米国以上に問題は深刻である。

 さらにウラン鉱山跡の廃棄物、プルトニウム製造工場などでの放射能汚染、閉鎖した核兵器工場の解体、老朽化した原子力潜水艦や原発、廃棄物貯蔵所…。いずれの問題をとっても簡単な解決法が見つからないのが現実である。

 原子力エネルギーに依存した二十世紀から二十一世紀へと先送りされた核時代の「負の遺産」。新しい世紀に足を踏み入れた今、省みられぬヒバクシャの存在をも含め、その重荷に最もあえぐ旧ソ連と米国を歩き、実態を探った。

 旧ソ連から、毎週日曜日に、特集でリポートする。

(2001年9月16日朝刊掲載)

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