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サーローさん映画 全米で来年放送 露のウクライナ侵攻 核問題 関心高く

 カナダ在住の被爆者サーロー節子さん(91)の半生を追ったドキュメンタリー映画「ヒロシマへの誓い」が来年、全米で放送されることになった。先月、米ニューヨークからスーザン・ストリックラー監督と一時帰国した竹内道プロデューサー(広島市出身)は「広く見てもらえるまたとないチャンス」と期待する。

 米国では各都市に独立した公共放送局があり、それら約350局に番組を選定して提供する組織がある。その組織から昨年末、ストリックラー監督に連絡があった。ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領が核兵器使用に言及したことで、米国市民の間で核問題へ関心が高まっているという。「映画の製作を始めた頃、核兵器の問題は冷戦体制の崩壊で終わったことだと言う人までいた。今こそ多くの人に見てほしい」とストリックラー監督。

 映画は、サーローさんの生い立ちや13歳での被爆体験、被爆死した肉親や級友の無念を胸に核兵器禁止条約の実現に向け奔走する姿などを収める。被爆2世の竹内さんが原爆について語らなかった祖父や母の人生をたどる様子も織り込む。

 高校卒業後に留学して以来、米国で暮らす竹内さんは「米国の一般市民は原爆や核兵器について教えられておらず、ほとんど知らない。一方で正義感が強く、行動する人が多い」とも感じてきた。「知らないから動かないだけ。映画を見てもらうことで、廃絶への行動につながれば」と願う。

 映画は核兵器に対峙(たいじ)する女性たちの勇気を描いた作品でもある。米国の女性史月間である来年3月に放映できるよう調整しているという。(森田裕美)

(2023年6月26日朝刊掲載)

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