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島根1号機40年 住民 廃炉望む声強く 財界関係者ら「3号機稼働優先を」

 29日に運転開始から40年を迎える中国電力の島根原発1号機(松江市鹿島町、出力46万キロワット)。同じ沸騰水型の福島第1原発の事故以来、地元住民には廃炉を望む声が根強い。松江市の松浦正敬市長が廃炉の考えを鮮明にしたのに続き、中電も27日、選択肢にする考えを示し、廃炉は現実味を帯びてきた。(樋口浩二、山本洋子)

 「福島では今も避難生活が続く。中電は一日も早く廃炉を決断してほしい」。1号機と40年間「共存」してきた鹿島町の主婦森脇良子さん(75)は願う。

 1号機は2004年、60年間の運転を想定した技術評価が当時の原子力安全・保安院に認められた。だが福島の事故で、中電が言う「60年の安全」への信頼は揺らぐ。

 1号機の立地などに伴い1980~2012年度に計605億円の交付金を受け取った松江市。地元には多くの小学校や公民館ができた。森脇さんは「事故の前は原発をありがたいとも思った。でも今は、命はお金に替えられないと声を大にしたい」と訴える。

 コスト面からも廃炉を求める声が上がる。島根大法文学部の上園昌武教授(44)=環境経済論=は「原子炉の型から危険性は高い。巨額の安全対策費を投じてまで延命させるべきではない」と指摘する。

 原発の稼働に理解を示す地元財界や議会には「稼働が難しい1号機より最新の3号機(出力137万3千キロワット)を」との声が広がる。島根経済同友会の宮脇和秀代表幹事は、電気料金を抑えるため「出力が約3倍で最新の3号機は動かすべきだ」とする一方「1号機の40年超えは世論が許さないだろう」とみる。

 自民党のベテラン県議も「住民の不安が強すぎて1号機の稼働は無理」。別の県議は中電の思惑をこう見立てる。「廃炉という切り札を使わなければ2号機(出力82万キロワット)、3号機の稼働に地元の理解を得られない。廃炉の覚悟はできているはずだ」

 再稼働か、廃炉か―。27日の会見で「廃炉という選択肢もある」と言及した中電の苅田知英社長。「廃炉後の対策をどうとるべきか(他の電力会社と)情報交換している」とも明かした。

 原子力規制庁は「20年の運転延長のための技術基準は相当ハードルが高い」とみる。苅田社長も「安全対策については2、3号機と比べていろんな意味で1号機特有の安全対策の問題もある」と認める。

 中電は運転延長の申請期限となる「来年7月までに判断する」とするが、原子炉圧力容器のひび割れを超音波などで調べる「特別点検」が不可欠で、実施には1年程度かかるとされる。単純計算なら、今夏にも決断を迫られることになる。

 苅田社長は「廃炉にしても運転を継続するにしても、立地自治体や関係自治体に説明することになる」としている。

(2014年3月28日朝刊掲載)

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