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被爆留学生を登載へ 原爆死没者名簿に初申請 広島大

 1945年8月6日に広島市で被爆した後に他界した留学生の名前を原爆死没者名簿に登載するよう、広島大が市に初めて申請したことが26日、分かった。中国大陸からの留学生9人と、東南アジアからの「南方特別留学生」8人の計17人。市は既に受理しており、被爆留学生の名前を刻んだ名簿が8月6日、平和記念公園(中区)の原爆慰霊碑へ納められ、追悼される。

 広島大の前身の文理科大と高等師範学校は当時、日本軍が統治した「満州国」(現中国東北部)などから留学生を受け入れ、中国大陸出身の12人が在籍中に被爆。うち張秀英さん=当時(26)=たち男女6人が爆心地そばの宿舎や、中区東千田町にあった校舎などで原爆死した。広島大はこの6人に加え、既に亡くなったと確認した3人の登載を求めている。

 南方特別留学生は親日的な指導者を育てようと、当時の日本が東南アジアを対象に設けた国費留学制度。原爆が投下された45年に文理科大で学んでいた9人中8人が被爆した。このうち、いずれもマラヤ(現マレーシア)出身で19歳だったニック・ユソフさん、サイド・オマールさんの2人が犠牲となった。残る6人も既に全員が死去している。

 広島大の越智光夫学長は「大学として、どの国の犠牲者も等しく慰霊していきたい。今なお消息が分からない人もおり、申請が遅くなってしまったが、これを第一歩としたい」と話す。

 市は申請を受け、既に名簿に載っている人がいないか確認中。市原爆被害対策部は「外国人の登載申請は少なく、犠牲者が新たに分かったことは意義がある。未記載の人は全員登載し、追悼したい」としている。(編集委員・田中美千子)

(2023年6月27日朝刊掲載)

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