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社説・コラム

『潮流』 サミット撮影記

■報道センター映像担当部長 小林正明

 核保有国の米英仏を含む各国首脳が、平和記念公園(広島市中区)の原爆慰霊碑へ歩を進めている。原爆ドームが手前に写る遠景。本紙カメラマンが捉えた、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を象徴する一枚だ。

 ヘリコプターから狙ったこの写真。撮影したのはドームから北へ3キロ離れた安佐南区西原からである。サミットの航空代表撮影では要人が施設の屋外に滞在する場合、半径3キロ外に出る規定が設けられたためだ。

 ウクライナのゼレンスキー大統領が広島空港に到着した際は、半径1・5キロ外が管制の指示。こちらもヘリから黒い固まりを写し、画像を拡大してようやく、大統領と出迎えた人たちの握手の場面だと判別した。いずれも携わったカメラマンは「あまりの遠さにくらくらした」と言っていたが、無理もない。よく撮れていたと感心した。

 地上では、厳島神社(廿日市市)で大鳥居をバックにした首脳の集合写真も代表撮影を担った。撮影者は「雑談中の首脳は一般の人と同じ感じだったが、一堂に並ぶとオーラがすごくて緊張した」と振り返った。

 サミットの代表撮影に当たり、関係者の間では国際取材の経験が豊富な大手紙に任せては、との意見があった。だが、どうだろうか。本紙カメラマンが地元広島で開かれる大舞台で力を発揮しないはずはない。

 それは代表取材に限らない。開幕前日からほぼ全記者が会場のホテルや平和記念公園周辺、首脳の車列が通る沿道に張り付いて取材し、シャッターを切った。

 こうした積み重ねが、200枚以上の写真や記事を収めた「報道写真集 G7広島サミット~被爆地から世界へ~」につながった。多くの人に手に取っていただきたい。手前みそだが、地元紙の総力と誇りを示した記録集だと分かってもらえると思う。

(2023年6月29日朝刊掲載)

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