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社説・コラム

天風録 『ベラルーシの独立記念日』

 きょうはベラルーシの独立記念日である。本来なら1990年に国家主権宣言をした7月27日のはずなのに、ルカシェンコ大統領が17年前に変更を提案して、国民投票で決まった▲7月3日は第2次大戦中の独ソ戦で首都ミンスクがナチスの占領から解放された日。そこまでして変えたかった訳は何なのか。ルカシェンコ氏は旧ソ連からの独立という現実を受け入れられないのだと、服部倫卓(みちたか)著「不思議の国ベラルーシ」は記す▲それもそのはず。「ロシアと統合を遂げ、自身が連合大統領としてクレムリンに君臨することを夢見てきた」という。プーチン政権を揺さぶった軍事会社ワグネルの反乱収束に一役買ってからの振る舞いに重ねてみる▲ワグネル創設者に進軍をやめさせて、戦闘員ともども受け入れを表明。今度は、自国にロシアが配備する核爆弾を「われわれの兵器だ」と言い始めた。強気な態度の下の狙いが気になる▲「欧州最後の独裁者」の両手に核兵器と汚れ役をいとわない私兵組織。ウクライナ侵略がもたらした新たな火種だろう。ルカシェンコ氏は先日、部下から核爆弾の模型を贈られたという。独立記念日の祝いかもしれぬが、悪趣味極まりない。

(2023年7月3日朝刊掲載)

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