×

ニュース

被服支廠「文化財の方向」 財務相 予算措置応じる姿勢 被爆建物 国支援で保存に道

 鈴木俊一財務相は3日、広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)を巡り、耐震化に向けた国の予算措置を求めた被爆地選出の自民党議員たちに「文化財指定する方向で進めたい。(関係省庁から)予算を要求してほしい」と述べた。広島県が目指す国重要文化財(重文)指定が念頭にあるとみられ、文化庁から予算措置を求められれば応じる考えを示した格好だ。(樋口浩二)

 重文指定されれば、国が改修費用の半額を補助する仕組みがある。県の試算によると、1棟当たりの耐震化費用は少なくとも5億8千万円に上る。一時は県による解体方針も示された被爆の「生き証人」は、国による財政支援の下で保存される可能性が強まった。

 鈴木氏はこの日、自民党の被爆者救済と核兵器廃絶推進議連の4人と会った。議連の寺田稔会長(広島5区)や平口洋事務局長(同2区)が会談後、鈴木氏の意向を報道陣に明らかにした。寺田氏は「財務相の発言は大きい」と歓迎。議連は4日も永岡桂子文部科学相と会い、支援を求める。

 重文指定には所有者の申請を受けた文化庁が有識者でつくる文化審議会に諮る必要がある。県は3月、全4棟のうち所有する3棟には重文級の価値があるとする調査結果をまとめた。しかし国の1棟は所有する中国財務局の対応が未定のままだ。議連はこの日、鈴木氏へ県と歩調を合わせる必要性も説き、平口氏によると理解を得たという。

 被服支廠を巡っては、県が6月上旬に初めて国に耐震化のための財政支援を求めたばかりで、湯崎英彦知事が岸田文雄首相を官邸に訪ねて直訴していた。所管する県経営企画チームの担当者は「国の財政支援が実現するのであれば、大変心強い」と受け止めた。

旧陸軍被服支廠(ししょう)
 旧陸軍の軍服や軍靴を作っていた施設。1913年の完成で爆心地の南東2・7キロにある。米国の原爆が落とされた後は、被爆者の臨時救護所となった。13棟のうち4棟がL字形に残り、戦後は企業の倉庫や広島大の学生寮として使われた。広島県が1~3号棟、国が4号棟を所有。いずれも築100年を超え、老朽化が進んでいる。

(2023年7月4日朝刊掲載)

年別アーカイブ