×

ニュース

核抑止論 明確に否定へ 平和宣言で松井市長 広島ビジョンに言及

 広島市の松井一実市長は11日、ことしの平和記念式典で読み上げる平和宣言の文案の概要を明らかにした。5月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)で合意した核軍縮文書「広島ビジョン」が肯定した核抑止論に関し、「もはや成り立たず、破綻している」と明確に否定する考え。首脳たちに自ら語った原爆慰霊碑の碑文の説明を引用し、世界平和を願う「ヒロシマの心」を発信する。

 松井市長は市役所であった有識者たちの懇談会に文案を示し、おおむね了承を得た。終了後、報道各社の取材に、平和宣言では広島ビジョンの内容に触れた上で、核抑止論についての意見を展開すると表明。「現に核で威嚇する為政者がいる。核抑止論はもはや成り立たない」との趣旨を盛り込むと述べた。

 広島ビジョンに対し、平和宣言で核抑止論を否定するよう被爆者や市民団体が市へ相次ぎ要望していた。懇談会の委員は「十分応えている」との認識を示したという。

 平和宣言ではまた、サミットの際に平和記念公園(中区)を訪れた首脳たちに松井市長が「過ちは繰返(くりかえ)しませぬから」などと刻まれた碑文の意味を説明した経緯を紹介。首脳たちの原爆資料館訪問や被爆者との対話、芳名録記帳にも触れる。また世界の著名人の言葉を引きながら、核抑止力に依存せず、市民社会に平和文化を根付かせていく必要性を説く。

 松井市長は28日に宣言骨子を発表する。(野平慧一)

(2023年7月12日朝刊掲載)

年別アーカイブ