被服支廠発言 広島県戸惑い 国重文指定方針 閣僚から相次ぐ 国の1棟未調査 申請めど立たず
23年7月12日
広島市南区にある最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」を巡り、国重要文化財(重文)に指定し保存する方針を示す関係閣僚たちの発言が相次ぐ中、全4棟のうち3棟を所有する広島県に戸惑いが広がっている。国所有の1棟は重文に向けた調査をしていないため、県の3棟も重文申請のめどが立たないからだ。県が進める耐震化の着工時期もいまだに見通せない。(河野揚)
「われわれに正式に連絡があったわけじゃない」。湯崎英彦知事は11日の記者会見で、重文指定を巡る報道を困惑した表情で受け止めた。今後は「国と調整を進める」と繰り返した。
県は6月、被服支廠への財政支援を岸田文雄首相たちに要請。自民党の議員連盟に対し、鈴木俊一財務相は「文化財に指定する方向」、山本左近文部科学政務官は全4棟の重文指定を進める考えを示した。重文になれば県は改修費の半額の補助を受けられる。
県は3月末に1~3号棟の重文指定への調査を終えた一方、国が所有する4号棟は未調査だ。管理する中国財務局は「関係機関と適切に対応する」と説明するが、現時点では調査着手の方針を示していない。
県は2021年5月、1~3号棟を1棟当たり概算で5億8千万円かけて耐震化する方針を決めた。本年度から順次着工する予定だった。ただ、建設資材の高騰で工事費が膨らむ見通しで、県単独による財源確保は難しくなっている。
重文指定に時間がかかれば予算を確保できず、安全対策が遅れる事態も懸念される。湯崎知事は、会見で「安全上の問題もある。できるだけ早く調整したい」と意欲を示したが、現時点では先行きは見通せないままだ。
(2023年7月12日朝刊掲載)
「われわれに正式に連絡があったわけじゃない」。湯崎英彦知事は11日の記者会見で、重文指定を巡る報道を困惑した表情で受け止めた。今後は「国と調整を進める」と繰り返した。
県は6月、被服支廠への財政支援を岸田文雄首相たちに要請。自民党の議員連盟に対し、鈴木俊一財務相は「文化財に指定する方向」、山本左近文部科学政務官は全4棟の重文指定を進める考えを示した。重文になれば県は改修費の半額の補助を受けられる。
県は3月末に1~3号棟の重文指定への調査を終えた一方、国が所有する4号棟は未調査だ。管理する中国財務局は「関係機関と適切に対応する」と説明するが、現時点では調査着手の方針を示していない。
県は2021年5月、1~3号棟を1棟当たり概算で5億8千万円かけて耐震化する方針を決めた。本年度から順次着工する予定だった。ただ、建設資材の高騰で工事費が膨らむ見通しで、県単独による財源確保は難しくなっている。
重文指定に時間がかかれば予算を確保できず、安全対策が遅れる事態も懸念される。湯崎知事は、会見で「安全上の問題もある。できるだけ早く調整したい」と意欲を示したが、現時点では先行きは見通せないままだ。
(2023年7月12日朝刊掲載)