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社説・コラム

天風録 『不発弾の行方』

 ヨルダンの空港で手荷物が金属探知機に引っかかる。戦場のイラクから日本の新聞記者が持ち帰った釣り鐘形の物体だ。警備員が調べていると突然爆発した。罪なき6人が死傷した20年前の事件だ▲記者がイラクで拾った時、付いていたひもを引っ張ったり、留め金のようなボタンを押したりしたという。何も起きないので爆発物の残骸だと思い油断したらしい。実際は、多くの子爆弾をまき散らすクラスター(集束)弾の、不発の子爆弾だった▲不発弾は最大で4割に上るそうだ。戦火がやんでも、戦地に残されたまま。今でも何かの拍子で爆発すれば子を含む民間人を傷付けてしまう。非人道的だからこそ、使用や輸出入を禁じる条約ができたはずだ▲当初は後ろ向きの日本政府も賛同に転じた。今や加盟国は100を超す。危険さが知れ渡った証しだ。ところが米国は、ロシアに反撃中のウクライナ支援のため、供与に踏み出す。条約に加盟していない国だからといって、見過ごすわけにいかない▲米国と同盟関係にある英国やイタリアなどでさえ異を唱えた。不発弾は将来の復興の妨げにもなる。罪なき民間人の被害拡大に道を開く日本の追認は、到底許されない。

(2023年7月13日朝刊掲載)

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