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本館・東館20分 被爆者対話30分 広島サミット原爆資料館見学 県民会議案が開示

実際は時間短縮 本館行かず

 広島市で5月にあった先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、広島県や市が事前に国へ示した首脳たちの原爆資料館(中区)見学案が14日、中国新聞の情報公開請求に基づく開示文書で分かった。20分かけて本館と東館を巡り、被爆者と30分対話する内容だった。実際は被爆の実態を伝える本館には行かず、東館で一部の被爆資料を見ただけで、滞在時間も短縮された。

 開示文書によると、県内の官民でつくる広島サミット県民会議が昨年10月5日に外務省と協議した際、首脳たちの平和記念公園(中区)訪問に向けた事務局案を提示。資料館の見学や被爆者との対話、芳名録の記帳、原爆慰霊碑への献花について動線などを示しながら7ページの資料で説明していた。

 案では資料館の見学時間を20分に設定。一般のルート通り東館1階から3階に上がり、本館に渡って被爆者の遺影や遺品を見てもらう想定だった。被爆者との対話には30分を確保。芳名録の記帳は10分とし、滞在時間は合わせて約1時間を見込んでいた。

 ただ、協議結果を報告した文書には、外務省側の発言として「できるだけ実現したいと考えているが、全体の会議スケジュールとの兼ね合いや各国との調整もある」と記されていた。

 G7と欧州連合(EU)の首脳9人はサミット初日の5月19日に平和記念公園を訪れた。そろって資料館を見学し、被爆者との対話、芳名録記帳を経て館外に出るまで約40分だった。本館には行かず、東館で被爆資料を見たことが判明している。

 県民会議事務局は中国新聞の取材に「案は事務局側の計画であり、実際の資料館視察などは外務省に確認してほしい」としている。政府は「資料館の主な展示テーマに即した形で重要な展示品を見てもらった」としつつ、詳細を明らかにしていない。(和多正憲)

(2023年7月15日朝刊掲載)

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