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「黒い雨」救済訴訟 第1回口頭弁論 原告「残る年数は短い」 広島県・市 請求退けるよう主張

 広島原爆の投下後に降った「黒い雨」の被害者救済を巡り、国が昨年4月に運用を始めた新たな被爆者認定基準の下で被爆者健康手帳を申請し、却下されるなどした広島県内の23人が県と広島市に却下処分の取り消しなどを求めた訴訟の第1回口頭弁論が18日、広島地裁であった。県、市側は請求を退けるよう求めた。

 原告団長で、佐伯郡砂谷村(現広島市佐伯区)で雨を浴びたと訴える岡久郁子さん(82)=西区=が意見陳述し「私たちに残された年数は短い。県や市には手続きから取り残されている人をどう救うのか方針を示してほしい」と求めた。県と市側は答弁書で「原告の訴えは訴訟要件を欠き、不適法だ」などとして請求の却下や棄却を求め、詳細は「追って主張する」とした。

 訴状などによると、原告23人は70~90代で、現在の廿日市市吉和や広島県北広島町大朝などで雨に遭ったとして手帳を申請。17人は却下され、6人は被爆者と認定されたが、手帳交付日の前倒しを求めている。

 被害者の救済拡大を命じた2021年の広島高裁判決を受け、国は新基準を定めた。認定実務を担う県と市は従来の援護対象区域に加え、過去の調査で示された二つの降雨区域も参考に審査。雨に遭ったと否定できず、がんや肝硬変など11疾病のいずれかにかかっていれば手帳を交付する。

 県と市によると、新基準に基づく申請は6月末までに計5159人で、229人が却下となった。原告側は雨が降ったと認める範囲はなお不十分とし、11疾病の要件も違法と主張している。(堅次亮平、浜村満大)

(2023年7月19日朝刊掲載)

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