×

ニュース

「原爆の図」鮮明さ戻る 第1部 修復が終了 丸木美術館 きょうから公開

 広島市安佐北区出身の画家の丸木位里と、妻の俊が描いた連作「原爆の図」の第1部「幽霊」が19日、修復を終えて1年7カ月ぶりに埼玉県東松山市の原爆の図丸木美術館に戻った。被爆の惨禍を表現した作品は汚れが落ち、より鮮明となった。20日から公開する。

 1950年発表の「幽霊」は衣服が焼け落ち、皮膚の垂れた腕を上げてさまよう人々の様子を描いている。約70年間で20カ国以上での展示を重ねる中、汚れや虫食いなどの劣化が進んだ。修復のため、2021年12月に愛知県長久手市の県立芸術大文化財保存修復研究所へ移した。絵の描かれた和紙をびょうぶから外し、水で汚れを取り除いた。びょうぶの木枠や補強のための裏紙は新調した。

 19日は、美術館の学芸員たちが作品を箱から慎重に取り出し、展示台に飾った。同時に第2部「火」を修復のため運び出した。同研究所の清水由朗所長(62)は「悲惨さを伝えたい、残したいという夫妻の思いが筆遣いから伝わる。後世に引き継ぐという重大な仕事と感じている」と話した。

 美術館は17年に基金を創設し、原爆の図の保存に充てている。残る作品の修復も基金の状況を踏まえて検討する。(山本庸平)

原爆の図
 水墨画家の丸木位里(1901~95年)と、油彩画家で妻の俊(12~2000年)が共同制作した。50~82年発表の全15作。2人が見た被爆直後の広島の惨状を基に、墨や日本画の画材で描いた。いずれも縦1・8メートル、横7・2メートル。第1~14部は原爆の図丸木美術館、第15部「長崎」は長崎原爆資料館(長崎市)が所蔵する。

(2023年7月20日朝刊掲載)

年別アーカイブ