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被爆2世広がる継承活動 広島の「語ろう会」結成1年 講話会や研修会 積極企画

 広島市の被爆2世たちでつくる「ヒバク2世の語ろう会」が結成から1年を迎え、被爆体験継承活動の裾野を広げている。家族の体験を語る講話会を企画したり、研修会を開いて人前で話す練習をしたり。多くは市が養成する家族伝承者制度の研修生で、自発的な研さんの機会となっているほか、制度の応募条件を満たさない人が活動する場でもある。(新山京子)

 今月上旬、中区の原爆資料館であった研修会に15人が参加した。家族伝承者の研修生5人が、講話原稿の書き方や被爆後の惨状が描かれた絵の見せ方などを解説。「被爆者が歩いた経路を地図上で見せると分かりやすい」と助言した。

 メンバー22人は40~80代の主婦や会社員、退職者など多様だ。研修会を中区と安佐北区でそれぞれ月1回開く。父母らの被爆体験をまとめた原稿を持ち寄って音読の実習をしたり、文章構成を議論したりして「デビュー」の準備を進める。

 永井幸雄さん(68)=中区=は爆心地から1・7キロで被爆した父幸四朗さん(96)の体験を伝えるため研修中だ。金融機関に勤めながら全国を転勤。広島に帰郷し「家族の体験と向き合いたい」との思いを強めていた時、市の制度を知った。だが「何から手をつければいいのか」。同会にも参加し、助言を受けて原稿を仕上げた。「被爆の惨状を熱心に伝えようとする人たちに刺激を受けた」と話す。

 市の家族伝承者制度は被爆体験を持つ親族が存命であることを条件とする。同会では、家族が亡くなったり体験の聞き取りが難しくなったりして研修を受ける資格のない人も活動している。3月には被爆2世の3人が講話会を初開催し、亡き父母の体験を語った。

 同会は28日に井口公民館(西区)でワークショップ、9月24日に原爆資料館で講話会を計画。代表の佐々木佐久子さん(73)=西区=は「前向きに活動しようとする被爆2、3世が増えていると感じる。知識や経験を共有し長く続けたい」と力を込める。

(2023年7月19日朝刊掲載)

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