「沖縄戦の図」 思考の軌跡 丸木位里・俊 ドキュメンタリー映画 来月広島で公開
23年7月22日
e="font-size:106%;font-weight:bold;">宜野湾・佐喜眞美術館の全14部 民衆と「共同制作」
画家として命の大切さにまなざしを注ぎ続けた広島市安佐北区出身の丸木位里(1901~95年)と妻の俊(12~2000年)。沖縄県宜野湾市の佐喜眞美術館が所蔵する夫妻の作品を関係者の証言とともに収めたドキュメンタリー映画「丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全14部」が8月4日、八丁座(広島市中区)で公開される。河邑厚徳(かわむらあつのり)監督(75)は「沖縄で何を考え、何に怒り、何を願ったのか。沖縄戦の全体像と2人の思考の軌跡が浮かび上がる」と語る。(渡辺敬子)
水墨と洋画の技法で、戦争の悲劇を表現し続けた夫妻。映画では「原爆の図」を完成させた晩年の2人が6年かけて沖縄に通い、1987年までに描き上げた「沖縄戦の図」「ひめゆりの塔」「残波大獅子」など14点を制作順に紹介する。
位里は「沖縄戦は米国側が撮った写真しかない。日本人側から見たかたちを残しておかなければならない」と決意した。夫妻は地上戦の跡を歩き、体験者や遺族と対話を重ね、住民にモデルを頼み、自然の中に身を置いた。沖縄の民衆と「共同制作」を試みた。
河邑監督は「時代のうねりと重なった。長い沈黙を経て、体験者が証言を始めた」と見る。「新たな戦争の道が始まるのではないかという敏感な危機感を感じた人々と、作品を完成させたいと願ったのだろう」
写真家山城博明、元読谷村長の山内徳信、集団自決の調査を手がけた知花昌一をはじめ当時を知る関係者の証言は貴重だ。戦争体験の継承を志す民謡歌手たち若い世代もすがすがしい。
佐喜眞美術館は夫妻の作品を展示するため、普天間基地に接収された土地を取り戻し、94年開館した。「アートは感性に訴える力がある。置かれた場所と一体になり、平和を発信する拠点となった」と河邑監督。「広島から沖縄へ続く歩みをたどり、2人を再発見してもらう手がかりになればうれしい」と力を込めた。
(2023年7月22日朝刊掲載)