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連載・特集

都心はいま パート6 サミット後の誘客 <3> 体験型ツアー

楽しむ広島 趣向変えて

泊まって深く 新企画期待

 広島の都心を一望できる山頂近くで、野だての抹茶を味わうハイキングツアーが外国人の人気を呼んでいる。舞台はJR広島駅(広島市南区)から徒歩10分の二葉山。「想像していた以上に広島を知ることができた」。7月中旬、米ニュージャージー州から母と訪れたジェイク・モンゴメリーさん(16)は充実した表情を浮かべた。

眺めて復興実感

 モンゴメリーさんがツアーを見つけたのは、世界的な旅行口コミサイトのトリップアドバイザー。前日は市内に泊まり、午前10時からツアーに参加した。山頂に向かう途中、広島東照宮や金光稲荷神社の歴史も学んだ。

 ツアーを開く一般社団法人「My Japan(マイ・ジャパン)」(広島県熊野町)の三村理紗代表理事は「山頂からの景色を通して被爆からの街の復興と発展を感じてほしい」と願う。原爆ドーム(中区)と宮島(廿日市市)を訪れて日帰りする観光客に、宿泊して広島をより深く知ってもらいたいと2019年にモニターツアーを始めた。現在は月に20組ほどが利用する。

 新型コロナウイルス禍の打撃を受けた広島の観光は、5月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)を経て再び活気づいている。ただ、産業としては他都市より力強さを欠いてきた。

 観光庁による19年の外国人観光客の消費動向調査で、都道府県別の1人当たりの旅行消費額は広島が4万1千円と23位。ベスト3は北海道(12万1千円)東京(10万9千円)沖縄(9万7千円)でいずれも宿泊費が多い。宿泊客が増えれば経済効果は大きくなる。

ホテル計画着々

 「ツアーや体験会などの数が足りない」と課題を指摘するのは、広島県観光連盟(中区)の山辺昌太郎チーフプロデューサー。多くの人が訪れる広島都心で、滞在時間を長くする観光サービスを増やすことが重要と説く。原爆ドームと宮島に加わるスポットがあれば、宿泊して翌日に周辺の観光地を訪れてもらうことも期待できる。

 新たな体験型ツアーづくりは動き始めたばかり。一方、ホテルは大型の新設計画が控える。市によると、市内のホテル・旅館の客室数は15日時点で1万7699室となった。さらにホテルチェーンのアパグループ(東京)が24~26年に広島駅周辺で3棟(計1136室)の開業を予定するなど、受け皿の充実は進む。

 自転車で市内を巡り、戦前戦後の広島を伝えるツアーを運営するmint(ミント、中区)など、旅行サイトで人気を集める事業者も出てきてはいる。25年には大阪・関西万博があり、広島への訪日客の増加も見込まれる。

 ミントの石飛聡司社長は「広島には欧米からの観光客が多いが、欧州でも国によって趣向が全く異なり、一事業者で全てに応えるのは難しい。アジアからの観光客向けを含め、広島でしか体験できないさまざまなサービスを提供できるよう事業者が増えてほしい」と願う。(松本真由子)

(2023年7月25日朝刊掲載)

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