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被爆体験を歌に込め 扇ひろ子さんが「原爆の子の像」熱唱

■記者 永井友浩

 ヒット曲「新宿ブルース」で知られ、生後半年で爆心地から約2キロ離れた広島市内の自宅で被爆した歌手の扇ひろ子さん(64)が12日、広島市中区での市制施行120周年記念式典で、デビュー曲「原爆の子の像」を熱唱した。

 19歳だった扇さんにとって、1964年8月6日の平和記念式典で涙をこらえながら歌った思い出の曲だ。今年5月に亡くなった大竹市出身の作詞家石本美由起さんが、白血病の回復を願って折り鶴を折り続けながら12歳で亡くなった佐々木禎子さんをモデルに作詞した。

 あれから45年。この日、広島国際会議場で開かれた市制120周年記念式典のステージには、平和記念公園で撮影された19歳当時の扇さんの姿が映し出された。「亡くなった母から『みんな悲しいんだから絶対泣いてはいけない』と言われていた」と扇さん。あの夏、父親を失った。「これからも母から聞いた被爆体験を伝えていきたい」と誓い、情感豊かに歌い始めた。

 青空あおぎて 平和を祈るや 折鶴ささげし 少女の像よ 微笑む春をも 知らずに散りし 幼きみ魂よ 静かに眠むれ

 会場の約1200人が静かに聞き入った。

(2009年7月13日朝刊掲載)

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