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「ゲン」の体験 伝える朗読 連載開始から50年 故中沢さんの半生中心に

中区であす 元アナら「今こそ触れて」

 広島市在住の元アナウンサーや司会業の人たちでつくる「ひろしま音読の会」が28日、漫画「はだしのゲン」の原作者、故中沢啓治さん(2012年に73歳で死去)の被爆体験や平和への思いを伝える朗読公演を中区のJMSアステールプラザで開く。ゲンの少年誌での連載開始から今年で50年。幼い頃、ゲンから原爆の恐ろしさを学んだメンバーが企画した。(余村泰樹)

 約1時間半の公演では、メンバー10人が中沢さんの半生を記した小冊子「はだしのゲンはピカドンを忘れない」を中心に朗読する。被爆後の惨状や肉親を奪われた悲しみ、敗戦後に遭った差別…。自伝的作品であるはだしのゲンの基となった中沢さんの壮絶な体験を、漫画の場面を投影しながら読み上げる。小冊子「はだしのゲンはヒロシマを忘れない」からも2編取り上げ、若い人たちへの平和のメッセージを伝える。

 同会は00年10月、中国放送(中区)の現役・元アナウンサーたちで設立した。毎年夏、峠三吉や栗原貞子の原爆詩などの朗読公演を開いてきたが、中沢さんを取り上げるのは初めて。小学校でのゲンとの出合いが原爆に向き合う原点になったというメンバーの藤越はる美さん(51)が中沢さんの妻に提案し、実現した。

 今年は広島市教委が平和教材からはだしのゲンの引用を削除し、波紋が広がった。藤越さんは「ゲンには激しい描写もあるが、子どもたちが核兵器はいけないと実感できる作品なので削除は残念。核の脅威が高まる今だからこそ、朗読を通じて中沢さんの思いに触れてほしい」と呼びかけている。朗読公演は28日午後6時開演。入場無料。音読の会☎090(1684)8324=藤越さん。

(2023年7月27日朝刊掲載)

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