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核禁条約へ参加や批准要求 意見書採択 地域で差 岩手100% 山口・佐賀ゼロ

 国連での核兵器禁止条約の採択から今月で6年。国内の地方議会で日本政府に対して条約への参加や署名、批准などを求める意見書の採択が相次ぐ中、都道府県別の広がりに濃淡が目立ってきた。日本原水協によると、岩手県内の全議会が意見書を採択した一方、山口、佐賀両県はゼロ。条約への考え方や、被爆者団体の動きなどが影響しているとみられる。

 条約は2017年7月、国連で122カ国・地域が賛成し採択された。20年10月に批准国・地域が要件の50に達し、21年1月22日に発効した。地方議会の動きは17年から活発になっており、日本原水協によると全国1788の都道府県・市区町村議会のうち、今月7日時点で37%の659議会が意見書を採択している。

 岩手県は全国で唯一、全議会が採択している。20年3月に大船渡市議会が可決し、県議会と全33市町村議会の足並みがそろった。

 県被団協などが各議会に向けた働きかけを展開。全議会に意見書案を送り、被爆者らも議会に出向いた。その結果、保守系議員も含む全会一致での可決や一度否決になった議会で採択されたケースが相次いだ。県被団協の下村次弘事務局長(83)は「被爆体験を直接伝え、実態を知ってもらうことは理解を得る上で大きかった」と振り返る。

 一方、山口、佐賀の2県には採択した議会がない。山口県内では山口市や下松市などの議会が意見書を巡る審議をしたものの、最終的に否決した。反対する議員は討論で「核の傘に守られているという事実を無視して同意できない。まずは日米同盟を再考すべきだ」「条約の賛否を巡り核保有国と非保有国との溝が深まる中、日本政府は双方の橋渡し役を担うべきだ」などと主張した。

 県原水協の打道晋一事務局長(69)は、県被団協や原水禁山口県民会議と協力して各議会への働きかけを強めたいとし、「全県一斉に呼びかけるくらいのインパクトが必要だ」と話した。

 日本原水協のまとめでは、山口以外の中国地方各県の採択は広島18市町議会(75%)岡山21市町村議会(75%)島根6市町議会(30%)鳥取13県市町議会(65%)。広島市議会は6月、5回目となる意見書を可決している。(口元惇矢)

(2023年7月28日朝刊掲載)

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