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中国人強制連行の歴史 今に 戦時中 安野発電所建設に360人 広島の市民グループが冊子 地図や証言 和解経緯も

 戦時中、安芸太田町坪野の安野発電所の建設に中国人360人が連行され、過酷な労働を強いられた歴史を伝える冊子を、広島市の市民グループが作った。フィールドワークに使いやすいよう発電所、収容所跡など17地点を地図に落とし、現地の写真や関係者の証言を収録。工事を請け負った西松建設を元労働者側が提訴し、和解に至った経緯もまとめた。(田中美千子)

 B5判28ページ、フルカラー。「広島安野・中国人被害者を追悼し歴史事実を継承する会」が手がけた。元労働者たち16人の証言からは、粗末な食事しか与えられず、失明や指の切断などのけがや病気も相次いだ苛烈な労働実態が分かる。

 太平洋戦争中は国策により約4万人の中国人が日本国内の135事業所で働かされ、うち安野では広島での被爆死も含め、29人が死亡した。継承する会の前身の市民団体が1992年から実態を調査し、裁判を経て、2009年に和解が成立。和解金2億5千万円で基金がつくられ、個人補償や現地への記念碑建立などの事業に生かされてきた。

 継承する会の川原洋子事務局長(73)=広島市西区=は「真の和解は歴史事実を認めることから始まる。安野で起きたことを多くの人に知ってほしい」と話す。1冊500円で販売。送料実費で郵送もする。フィールドワークの案内も随時受け付ける。事務局☎080(3880)8340。

(2023年7月31日朝刊掲載)

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