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「核廃絶成果なし」5割超 サミット受け止め 被爆者団体本社調査 原爆資料館見学は評価

 被爆78年に合わせて中国新聞社が全国各地の被爆者団体に協力を依頼したアンケートで、5月に広島市であった先進7カ国首脳会議(G7サミット)について回答団体の52・9%が、核兵器廃絶へ「成果がなかった」と受け止めていたことが29日、分かった。核抑止力を肯定した核軍縮文書「広島ビジョン」への不満などが理由。一方で36・5%は、首脳たちの原爆資料館(中区)見学などを踏まえ「成果があった」としている。(根石大輔)

 中国新聞社が被爆者の都道府県組織と中国地方5県内の地域組織にアンケートをするのは、被爆70年の2015年以降7回目で2年ぶり。対象は15年の125団体と比べて3割減の91団体となった。6~7月に調査用紙を配り、85団体から回答を得た(回収率93・4%)。

 核兵器廃絶に関してサミットの評価を尋ねたところ、45団体(52・9%)が「成果なし」と答えた。理由に示した五つの選択肢(複数回答)のうち「核兵器廃絶へのメッセージが不十分」「広島ビジョンの内容に不満」が8割超に上った。

 「成果あり」としたのは31団体(36・5%)。うち30団体が「核保有国を含む首脳たちが原爆資料館を見学し、被爆者の話を聞いた」を理由に挙げた。「どちらとも言えない」が9団体(10・6%)だった。

 ウクライナのゼレンスキー大統領のサミット出席は「評価する」35団体(41・2%)▽「どちらとも言えない」29団体(34・1%)▽「評価しない」21団体(24・7%)―と回答が割れた。日本政府による核兵器禁止条約の署名・批准と、締約国会議へのオブザーバー参加は、ほぼ全団体が望んでいる。

 また、組織の状況も聞いた。被爆者の高齢化が進む中、前回21年のアンケート後に少なくとも9団体が解散していた。中国地方では、鳥取県内にあった4支部・分会が、22年に県組織へ一本化した。「被爆80年となる2年後も活動を継続できると考えているか」との問いには、16団体(18・8%)が「できない」と悲観的な見通しを示した。

 ≪調査の方法≫6月以降、アンケート用紙を郵送やファクス、持参で配布し、返信してもらった。一部は記者が電話や対面で聞き取りをした。都道府県の組織は40団体を対象とし、38団体から回答があった。日本被団協にオブザーバー参加している広島県被団協(佐久間邦彦理事長)や、県単位の活動がない山形県の「つるおか被爆者の会」(鶴岡市)を含む。中国地方5県の地方組織は51団体のうち47団体から協力を得た。

実態伝わらず

日本被団協の田中熙巳(てるみ)代表委員の話
 日本被団協としては、広島サミットは核兵器廃絶への成果はなく、むしろ後退したと受け止めている。広島ビジョンは「核軍縮」という響きは良いが、核抑止力を肯定する内容だ。回答団体の3割以上が「成果があった」と評価したのは、ビジョンの実態が伝わっていないからだと思う。ゼレンスキー氏の参加は「戦時下によく来てくれた」という評価が多いのではないか。どちらとも判断できなかった団体も多く、評価が割れたとみている。

G7サミット
 広島市では初めて5月19~21日に開かれた。核兵器を持つ米英仏3カ国を含む7カ国と欧州連合(EU)の首脳が出席し、岸田文雄首相が議長を務めた。初日に、首脳がそろって平和記念公園(中区)を訪れて原爆資料館を見学し、被爆者と面会。原爆慰霊碑に献花し、原爆ドームを眺めた。同日、核軍縮に特化した初の合意文書「広島ビジョン」をまとめた。ロシアによる侵攻を受けているウクライナのゼレンスキー大統領も最終日に電撃参加し、平和記念公園を訪問した。

(2023年7月30日朝刊掲載)

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