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核抑止論は「破綻」 平和宣言 広島市、骨子発表 脱却への後押し 市民社会に訴える

 広島市の松井一実市長は28日の記者会見で、被爆78年の原爆の日に平和記念式典で読み上げる平和宣言の骨子を発表した。5月に市であった先進7カ国首脳会議(G7サミット)の核軍縮文書「広島ビジョン」が肯定した核抑止論について、「破綻している」と強調。市民社会に向け、核抑止論からの脱却を為政者へ促すよう訴える。

 宣言では、広島ビジョンで「核兵器が存在する限り、防衛目的で役割を果たすべきだ」との考えが示されたと指摘。世界中の政治指導者に対し、核抑止論の破綻を直視した上で、核兵器のない世界へ具体的な取り組みを始めるよう迫り、市民社会の後押しも促す。

 サミットを巡っては、平和記念公園(中区)を訪れた首脳たちに松井市長が原爆慰霊碑前で碑文に込められた「ヒロシマの心」を説明し、受け止めてもらったとも回顧。被爆者の体験記を引用するなどし、為政者に被爆地訪問を要請する。

 ほかには、インドのマハトマ・ガンジーの「非暴力は人間に与えられた最大の武器」という言葉を盛り込み、あらゆる暴力を否定する「平和文化」を世界に広めるよう呼びかける。日本政府へは、核兵器禁止条約への署名・批准や、第2回締約国会議へのオブザーバー参加を強く求める。

 松井市長は、宣言で広島ビジョンの評価に踏み込まない考え。会見では「各国の為政者に、理想の追求と未来志向を貫く行動を促したい」と述べた。式典は8月6日午前8時から平和記念公園で営まれる。(野平慧一)

(2023年7月29日朝刊掲載)

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