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連載・特集

大竹市議会のいま 市議選を前に <下> 島民の不満

見えづらい 陳情の審議

騒音や航路 説明責任を

 2月上旬、大竹市の離島・阿多田島で開かれた市議会の議会報告会。「騒音がひどい」。島民10人が参加した会合で、そんな訴えが上がった。

 米軍岩国基地(岩国市)の北東約6キロにある島は基地を飛び立つ米軍機の飛行ルート直下にある。「ゴー」という騒音が昼夜なく降り注ぐ。中国四国防衛局によると、2022年度は阿多田島漁協に設置した測定器で「騒がしい街頭」に相当する70デシベル以上を4087回計測した。同じく測定器がある本土側のサントピア大竹(西栄)の1376回の約3倍に及ぶ。

 阿多田区自治会の柳川美喜男会長(74)は「電話の声やテレビの音が聞こえなくなることは珍しくない」と表情を曇らせる。

乗船券増配望む

 騒音対策の要望は、市議会が21年度に実施した地域課題アンケートでも島から上がっていた。議会は、15年に設けた基地周辺対策特別委員会などで対応を話し合っている。市は同防衛局に米軍への働きかけを求めているが、阿多田島の今年4~6月の騒音は1279回で、昨年同期間の1079回を上回っている。

 島の人口は236人(7月1日時点)。柳川会長は「日常的に騒音に悩まされている島民の経済的負担が減り、生活の質向上につながるはずだ」と今年2月、島と本土側の小方港を結ぶフェリーについて、高齢者に無料乗船券を配る市事業を拡充するよう求める陳情書を市議会に出した。

 フェリーは片道35分で1日5往復。船体が古くなっていたため、市が初めて約4億2900万円を全面出資して更新し、4月に就航した。運賃は中学生以上710円、小学生360円。市は現在、70歳以上の島民に年48枚の無料乗船券を配っている。陳情では券を年間72枚に増やし、全島民に拡大するよう求めた。

日程の案内なく

 陳情は付託された市議会生活環境委員会で審議し、市の担当者は「他地域との平等性の観点などから、現時点で事業拡大の考えはない」などと説明した。3月と6月の定例会でいずれも継続審議になったため、現市議の任期が満了となる8月末に審議未了で廃案となる見通しとなっている。

 市議会は議会報告会などで参加した市民に、要望があれば陳情をするようしばしば呼びかけている。19年の改選後以降の4年間で出された陳情は10件となっている。ただ、常任委員会、特別委員会での具体的な審議予定はホームページなどで案内していない。「知っていれば傍聴したのに」と柳川会長は残念がる。

 18年12月施行の市議会基本条例は議会審議の透明性確保のため「市民に対し議会の活動に関する情報を積極的に公表して情報の共有を推進し、説明責任を果たす」と記している。「市議会や市に要望しても、どう議論されているか見えづらい」との声もある。市民の目線に立った、より丁寧な説明が求められる。(長部剛)

(2023年7月29日朝刊掲載)

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