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社説・コラム

『美術散歩』 「忘却への抵抗」映す

◎坂本淳個展「Domes」 6日まで。広島市中区大手町1丁目4の18の1、いづゝや商店

 実在する建物の写真ではないという。人工知能(AI)の生成機能を使い、原爆ドームのある風景を「米国人画家エドワード・ホッパー風に」描かせてみて、それを写真に撮って画像を加工調整した。謎めいた「原爆ドームらしき」写真を3点、呉服店のショーウインドーに並べている。

 会場は原爆ドームから直線で約100メートル。番号「01」の作品など、実物との相違はかなり著しいのに、「原爆ドームを撮った写真」という印象が瞬間的に浮かぶ。形の組み合わせが、良くも悪くも脳裏に刷り込まれているのだ。

 坂本さんは1979年、東広島市生まれ。今は広島市を拠点に、写真家として「忘却への抵抗」を動機に創作しているという。原爆ドームの形は、忘れられていないけれど、よくは覚えられていない―。そんな批評の趣も感じさせて興味深い。(道面雅量)

(2023年8月1日朝刊掲載)

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