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[NPT準備委] 「悪魔の兵器」被害訴え 被爆者・広島市長ら演説

 オーストリア・ウィーンで開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議の第1回準備委員会で、広島の関係者たちが2日演説した。広島で被爆した日本被団協代表理事の家島昌志さん(81)=東京=は放射線による長期の健康影響を語り「悪魔の兵器は人類と共存できない」と強調。広島市の松井一実市長も核抑止論の「放棄」を訴えた。(ウィーン発 宮野史康)

 家島さんは非政府組織(NGO)の発言枠の最初に登場。初めて英語で証言した。3歳の時に爆心地から2・5キロの広島市牛田町(現東区)の自宅で被爆。中心部で親戚を救護した父親を被爆24年後にがんのため59歳で亡くした。自身も6年前に甲状腺がんを患ったといい「こんな晩年に影響が出るとは思わなかった」と振り返った。

 再検討会議の過去2度の決裂に触れ、核軍縮の停滞に危機感を表明。「核廃絶の道筋を示してほしい」と各国の外交官たちに求めた。

 松井市長は平和首長会議会長として演説した。ロシアのウクライナ侵攻で、多くの為政者や世論が核抑止力の拡大に理解を示す現状を「被爆地の願いに逆行する」と断じた。5月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)で首脳たちが広島を訪れた意義をアピールしつつ「破綻している核抑止論を放棄し、核兵器廃絶へ具体的行動を始める必要がある」と呼びかけた。

 サミットを巡っては、日本原水協の土田弥生事務局次長も言及。核抑止力を肯定した核軍縮文書「広島ビジョン」について「人類の生存を今も危うくしている核軍備競争の論理そのもの」と批判した。

e="font-size:106%;font-weight:bold;">核配備巡り露と応酬 ポーランド 「戦況拡大のリスク」

 オーストリア・ウィーンで開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議の第1回準備委員会で1日、ロシアによるベラルーシへの戦術核兵器配備を巡る応酬があった。ロシアを13回も名指しして批判したポーランドの代表に対し、ロシアの代表は北大西洋条約機構(NATO)の核政策を挙げて反論した。

 ポーランドは「モスクワは毎日、女性や子どもたち市民を殺している」とウクライナ侵攻を指弾。ベラルーシへの核配備は「戦況を拡大させるリスクを大きく高める」とし、核軍縮の交渉義務を定めたNPTの第6条違反だと追及した。

 これに対してロシアは正面から答えず「ポーランドはロシアのことしか考えられないようだ」と切り返した。ポーランドは自国に核兵器を配備する意図があると指摘し、「ロシアへの非難は皮肉としか捉えようがない」と強調した。

 ポーランドのモラウィエツキ首相は6月、米国がNATO加盟国の一部に核兵器を配備する「核共有」に加わりたいと表明した。ポーランドはこの日の演説でもNATOの核共有はNPTに合致しているとし「ロシアのウクライナ侵攻を踏まえると安全保障に欠かせない」と主張した。

(2023年8月3日朝刊掲載)

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