家族5人奪われカメラ嫌った母 広島市教委が平和学習の副教材に採用 実話絵本の主人公
23年8月4日
ght:bold;">長女美穂さん、6日中区で講演
漫画「はだしのゲン」に代わって本年度から広島市教委の副教材に引用された実話絵本「いわたくんちのおばあちゃん」の主人公の長女岩田美穂さん(65)が6日、中区で講演する。「『おばあちゃん』は写真を撮られるのが大嫌いでした。その理由は…」。家族5人の命を奪った原爆のむごさと平和の大切さを伝える。(東海右佐衛門直柄)
「いわたくん」の祖母の綿岡智津子さん(2011年に82歳で死去)は78年前のあの日、現在の西区にあった学徒動員先の工場で被爆した。爆心地から約740メートルの旧西九軒町(現中区)の自宅に戻ると、一帯は壊滅し、焼け跡から黒焦げになった父と母、2人の妹の遺体が見つかった。もう1人の妹も建物疎開に出たまま戻らなかった。
1人になった智津子さんは当時16歳。被爆から数カ月後、1枚の写真が届けられた。被爆の数日前に撮影した一家6人のカットだった。でも5人はもういない。それから智津子さんはカメラを向けられるのを嫌がった。
智津子さんの話は06年に絵本になった。さらに今年4月から市教委が市立小3年向けの副教材「ひろしま平和ノート」に採用した。一方、はだしのゲンが同教材からなくなることに反対が広がり、両作品が対立構造にあるかのように語られることも一部にあった。
「皆の大切なものを奪うのが戦争。何かと比較するのではなく一人一人の悲劇を知ってほしい」。今回の講演会ではそんな思いを込めて話す。
講演会は、市民グループ「土橋界隈(かいわい)の歴史文化を伝える会」が午前11時から、中区土橋町の交流スペース「kitokoi(樹と鯉)」で開く。定員約40人。入場無料で、別途1ドリンクを注文する。電子メールでの予約が要る。kitokoihiroshima@gmail.com
(2023年8月4日朝刊掲載)