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被服支廠 首相の発言は 6日地元入り 重文指定への言及焦点 広島県 財政支援へ進展期待

 広島市南区にある最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」を巡り、広島県が、6日の平和記念式典に合わせて地元入りするとみられる岸田文雄首相(広島1区)の発言に注目している。建物の耐震化費用の確保に苦慮する中、首相が国の重要文化財(重文)指定などに言及すれば、当面の安全対策に向けた議論が進展するとの期待感がある。(河野揚)

 首相は例年、式典出席後に市主催の「被爆者代表から要望を聞く会」や記者会見に臨む。今年のテーマの一つになりそうなのが、被服支廠の保存だ。

 県は2021年5月、全4棟のうち県所有の1~3号棟を概算で1棟当たり5億8千万円かけて耐震化する方針を決定。ただ、建設資材の高騰などで工事費が膨らむ見通しで、県単独の財源確保が難しくなっている。

 湯崎英彦知事は今年6月、首相に財政支援を直接要請した。関係閣僚からは改修費の半額の補助を受けられる重文指定を巡る発言が相次ぎ、県は各省庁と水面下で協議を続けている。

 県幹部の一人は「首相が6日、重文指定に言及すれば一気に動く可能性がある」と期待。早期の着工に向け、年度内の重文指定もにらむ。

 一方、重文指定に向けては、建物の利活用策と国所有の4号棟の扱いが課題となっている。

 永岡桂子文部科学相は今月1日の記者会見で、「(県と市は)活用について結論を出していただきたい」と述べ、活用策の決定が前提になるとの考えを示した。

 「現時点で具体的な活用方法を決めるのは難しい」と県の担当者。県は周辺住民の安全対策を優先し、保存と活用は時間をかけて検討する構えでいる。3月に「方向性」として図書館や平和資料館など約30案を例示しており、これらを基に国の理解を得たい考えだ。

 また、4号棟は重文指定に向けた調査を終えておらず、国の対応も示されていない。調査済みの3棟を含めた全4棟での重文申請の見通しは立っていない。

 こうした課題を含め、首相は6日の会見などでどこまで踏み込んだ発言をするのか。ある地元選出の国会議員は「首相の地元にある被爆建物だ。質問されれば、いいかげんな回答はしないだろう」と推察する。

(2023年8月4日朝刊掲載)

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