×

ニュース

母国終戦を願い 支援の募金活動 ウクライナ出身 下松の古谷ニーナさん 「広島のように復興を」

 ロシアによる軍事侵攻の開始から500日を超えたウクライナ。同国中央部出身で下松市に住む古谷ニーナさん(28)は先月、周南市であった母国支援の募金活動に参加した。広島原爆の日の6日は、日本で生まれた長男の1歳の誕生日でもある。「ウクライナの未来のために今すぐ戦争が終わり、広島のように復興すると信じている」と力を込める。(久行大輝)

 募金活動は、戦時下にあるウクライナの人々に思いをはせてもらおうと周南市の周南西ロータリークラブ(RC)が企画。古谷さんは7月22日、藤井正一会長たち約30人と街頭で募金箱を持った。古谷さんは「皆さんの支援に本当に感謝している」と喜ぶ。

 5月に広島であった先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)はウクライナのゼレンスキー大統領も参加し、東部ドネツク州の激戦地バフムトについて「将来必ず広島のような復興がある」と述べた。古谷さんは「とても勇気づけられた。戦争終結には世界各国の強い団結が必要」と強調する。

 古谷さんは、集合住宅がミサイル攻撃を受けた中部チェルカスイ州ウマニの近郊出身。戦争は長期化している。母スビトラーナさん(47)は、古谷さんの説得を聞き入れて昨年夏、下松市に避難してきた。しかし、父オレクサンドルさん(53)と弟サーシャさん(23)は母国に残る。軍人のサーシャさんは砲撃で左腕に重傷を負い、リハビリに励む。古谷さんは「命があるだけでも良かった」。家族の身を案じる日々を送る。

 古谷さんはウクライナの国立大で日本語を学びながら日本文学を専攻。2015年に留学した山口大で夫の晃一さん(29)と出会った。17年に結婚し、長門市などに住んだ後、下松市で長女(3)と昨年8月6日に生まれた長男を育てている。古谷さんがウクライナに帰国したのは21年夏が最後。「今すぐにでも家族や友人に会いたい。郷土料理のボルシチやサーロ(豚の脂身を使う料理)が食べたい」と漏らす。

 「日本では平和や自由が当たり前」と古谷さん。「でも戦争はすぐ起きる。平和が簡単なものではないことが分かったはず。大切な平和を守るために何ができるか皆さんも考えてほしい」と呼びかける。

(2023年8月5日朝刊掲載)

年別アーカイブ