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[NPT準備委] 核軍縮議論 かみあわず 前半終了 米露対立が影響

 2026年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けオーストリア・ウィーンで開かれている第1回準備委員会は、前半の討議を終えた。核軍縮や不拡散について加盟国の政府代表たちが持論を展開したが、議論はかみあわず全体的に低調。ウクライナ情勢を巡る米ロの対立がNPT体制に暗い影を落としたままだ。(ウィーン発 宮野史康)

 「合意を生み出せないいらだちと落胆が、NPTの価値への悲観に変わらないか」。国連軍縮担当上級代表の中満泉事務次長が、準備委初日の7月31日の演説で示した懸念が現実になりつつある。

 シンガポールは「核兵器保有国は軍縮を進めようとしていないという根深い不信が強まっている」と指摘。オーストラリアは「今回の再検討会議の周期で軍縮を実現させると今、決意しなければいけない」と危機感を訴えた。

 論点の一つの核兵器禁止条約とNPTの関係でも進展は乏しい。「二つの条約が補い合うという性質は適切に評価されるべきだ」(メキシコ)などの推進国側の主張に対し、保有国は批判するか無視。英国は「NPTが核軍縮への唯一の信頼できる方策だ」とし、ロシアも「核兵器の単純な違法化は実行不能だ」と断じた。

 一方、ウクライナ情勢に絡んだ激しい応酬もある。ロシアが昨年9月の住民投票を経てザポロジエ州を「併合」したと宣言したのを受け、欧州最大のザポロジエ原発を「自国の施設」と主張。これに対し、欧州連合(EU)各国がウクライナを援護し、「不法な占拠だ」とこぞって非難している。

 ただ、核軍縮、核不拡散の分野別の討議がいずれも当初予定より1日早く始まるなど、日程上はスムーズに進んでいる。日本の非政府組織(NGO)の関係者は「米ロが対立している限り、核軍縮は進まないというあきらめがにじんでいる。だから各国とも言いたいことだけ言って、議論が深まっていない」と見立てる。

 当の米国は核軍縮について「有言実行している。しかし、残念ながら全ての保有国がそうしているとはいえない」と主張。NPT体制の立て直しや核軍縮への熱意は感じられない。

(2023年8月6日朝刊掲載)

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