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社説・コラム

天風録 『被爆地で記された誓い』

 文字に記した言葉とは心に響き、決意した内容のはずだ。原爆資料館を訪れたG7広島サミットの首脳たちは芳名録にメッセージを書いた。広島国際会議場に展示されている。言語や表現は違っても被爆地で核廃絶を誓い合ったと信じたい▲首脳たちが資料館に滞在したのはわずかな時間だ。目にした展示品もごく一部に過ぎない。それでもここを訪れて心揺さぶられぬ人はいない。胸にこみ上げたものは何か。印象や祈りを個性的な文字や言い回しで残す▲悲しみを言葉に出せ―。英国のスナク首相はシェークスピアの悲劇「マクベス」から言葉を引く。被爆者の苦しみに心を寄せ、力強く結ぶ。「私たちが、心と魂を込めて言えることは、繰り返さないということだ」と▲強い決意を示すが、では核兵器を手放してはどうか。原爆を落とした国の大統領は「世界から核兵器を最終的に、そして、永久になくせる日に向けて、共に進んでいきましょう」とつづる。なぜ早く歩み出さないのか▲「不言実行」という。口に出さずとも核兵器をなくすことは世界の首脳たちの責務だ。一日も早く実行に移し、果たさねばならない。言霊を信じ、私たちも被爆地から訴え続ける。

(2023年8月6日朝刊掲載)

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