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核禁条約 なお高い壁 首相、被爆者と面会 参加へ消極的姿勢

 岸田文雄首相が出席する広島市主催の「被爆者代表から要望を聞く会」が6日、中区のホテルであった。二つの広島県被団協など7団体は、先進7カ国首脳会議(G7サミット)で採択された核軍縮の共同文書「広島ビジョン」に核兵器禁止条約への言及がなかったことを批判し、早期の条約への署名、批准を訴えた。首相側は「核兵器なき世界」を理想としつつも、従来通り条約参加には消極的な姿勢を示した。(永山啓一、平田智士)

 岸田首相は冒頭のあいさつで、世界のリーダーが被爆者の声を聞き、原爆被害に直接触れた広島サミットの成果を強調。「核軍縮に向けた国際的な機運をいま一度高める」と話し、広島ビジョンを土台に取り組みを進める考えを示した。

 一方、7団体が提出した要望書は、核抑止論を前提とする内容だった広島ビジョンを「核軍縮、廃絶の道筋を提示できなかった」と批判。核兵器廃絶は「核兵器禁止条約でしか実現できないことが一層、明らかになった」と訴えた。

 被爆者の代表からは、11月にある条約の第2回締約国会議に少なくともオブザーバー参加するよう求める声も上がった。

 岸田首相は厳しい安全保障環境や条約に核兵器保有国が参加していない現状を指摘。「唯一の戦争被爆国として核兵器国を条約に関与させることが責任だ」と述べ、オブザーバー参加にも前向きな姿勢を示さなかった。

 終了後、県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(81)は「核兵器は絶対悪とする私たちと、政治家の考えがマッチしない」と述べ、核兵器保有国に配慮する日本政府にいら立ちをみせた。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(78)も「核兵器廃絶は後退している」と述べ、核抑止論の広がりに懸念を示した。

(2023年8月7日朝刊掲載)

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