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国際交流に力 自分も 兵庫遺族代表壷井さん 露の侵攻が契機

 兵庫県の遺族代表で高校教諭の壷井宏泰さん(57)=神戸市=は今年、被爆2世として証言活動を始めた。きっかけはロシアのウクライナ侵攻と「核の威嚇」。チェルノブイリ原発事故で被曝(ひばく)した旧ソ連の子どもとの交流などに力を注いだ亡き父の背中を追う。

 兵庫県西宮市職員だった父進さん(2016年に87歳で死去)は1980年代に証言活動を始めた。灯籠流しによる国際交流に力を入れ、97、98年にはクリミア半島の保養施設でウクライナなどの若者各約5千人を前に被爆体験を語った。

 「父がまいた平和の種が揺らいでいる」。そう感じた宏泰さんは昨夏、進さんの思いを継ごうと兵庫県被爆二世の会に入った。

 今年5月、神戸市で初めて進さんの体験を証言した。学徒動員先の東洋工業(現マツダ)で見た閃光(せんこう)、平和記念公園(広島市中区)内の旧天神町にあった自宅焼け跡で見つけた母親の亡きがら…。「つらい思いを乗り越えて活動した父を見続けたからこそ、その葛藤も含めて語れる」と力を込める。

 宏泰さんはこの日、進さんの遺影と平和記念式典に臨んだ。二世の会に入るまで平和活動とは無縁だったが、今は「被爆者と若者をつなぐのが2世の使命」と思うようになった。父に倣い、灯籠流しによる国際交流も思い描いている。(根石大輔)

(2023年8月7日朝刊掲載)

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