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核廃絶「具体計画見えず」 サーローさん、式典参列

 カナダ在住の被爆者サーロー節子さん(91)が平和記念式典に臨み、被爆地選出の岸田文雄首相の発言に失望感を示した。「核兵器廃絶への強い思いや具体的な計画が見えなかった」。市民側から、核抑止に頼る政策からの転換を迫る働きかけが必要だと訴えた。

 式典終了後に広島市中区で記者会見し、13歳での被爆体験と肉親や級友の死を振り返った。「78年前を思い出して強い痛みを覚えたが、平和を求める人たちと同じ時を過ごし、励まされもした」と語り、8年ぶりという参列の機会を得たことに感謝した。

 一方、首相のあいさつは「物足りない感じがした」。5月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)での核軍縮文書「広島ビジョン」についても「核廃絶こそ唯一の希望と訴える街で、核抑止を真正面から正当化した」と改めて批判した。核なき世界も唱える首相の「本心を聞いて」と、市民社会から政権の矛盾をただすよう呼びかけた。

 会見は、G7サミットを機に国際課題を話し合う「市民サミット」を開いた実行委員会などが主催。核廃絶に向けた各国指導者の決断や市民の行動を求める「市民の平和宣言」も発表した。(田中美千子)

(2023年8月7日朝刊掲載)

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