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[サミットを終えた夏] 被爆者の話を聞ける僕らは貴重な時代を生きている

平和な世界 対話から

首脳たちに花輪渡した宇品中生

教員らに思い伝える

 広島市内は6日、先進7カ国首脳会議(G7サミット)開催後初めての原爆の日を迎えた。「体力の続く限り」あの日の記憶を語り継ごうとする被爆者、平和への思いを新たにする子どもたち―。各地の追悼行事や集会は、核兵器のない世界を願う祈りに包まれた。

 話し合いは平和な世界をつくる第一歩―。G7サミットで首脳たちに原爆慰霊碑へ手向ける花輪を渡した宇品中(南区)の生徒たちが、原爆の日に合わせて開かれた小中学校の教員研修でエピソードや平和についての考えを発表した。

 研修は広島都市学園大(同)であり、宇品中と宇品、宇品東、元宇品の3小学校の教員計約130人が参加した。同中生徒会執行部の2、3年生計11人が登壇し「バイデン米大統領が親指をぐいっと上に上げて返事をしてくれた」「花輪は約3キロもあって重たかった」などと振り返った。

 生徒会長の3年明石華さん(15)は「海外の人とコミュニケーションを取る手段としてもっと英語を勉強したい」と思いを語った。研修では、生徒たちが菓子「きのこの山・たけのこの里論争」で意見の異なる相手との話し合いも実践した。

 研修に参加した宇品小の今井美咲教諭は「平和というと規模が大きくなるが、身近なことから子どもたちと話し合っていきたい」と話していた。(野平慧一)

旧中島本町元住民 浜井前会長しのぶ

平和公園で慰霊祭

 原爆で壊滅し、いまは平和記念公園(広島市中区)になっている旧中島本町の元住民たちでつくる中島本町平和観音会は、公園内の平和乃観音像前で慰霊祭を開いた。参列した約80人は、7月19日に88歳で死去した前会長の浜井徳三さんをはじめ、この1年に亡くなった会員にも黙とうをささげた。

 家族4人を原爆で亡くし、孤児となった浜井さん。生家やにぎやかだったまちの記憶を心に刻み、証言し続けた。旧中島本町が登場するアニメ映画「この世界の片隅に」の制作にも協力した。参列した長男光徳さん(57)は「まちがよみがえった感覚があったのだろう。何度も映画館を訪れていた」と振り返った。

 浜井さんが提供した戦前の写真をカラー化する試みで交流のあった東京大4年庭田杏珠(あんじゅ)さん(21)=広島市東区出身=も参列。「浜井さんから受け取ったメッセージを私なりの表現で発信していきたい」と誓った。(下高充生)

(2023年8月7日朝刊掲載)

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