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広島ビジョンに参加者怒り 「核共有を正当化」「被爆者を愚弄」 原水禁・協大会

 被爆78年の夏、二つの原水爆禁止世界大会は核抑止が大きなテーマとなり、これを容認できないとのメッセージをそれぞれ出した。一連の取材で痛感したのは、広島市で5月にあった先進7カ国首脳会議(G7サミット)の核軍縮文書「広島ビジョン」が核抑止を肯定したことへの参加者の落胆と怒りだった。

 原水禁系のヒロシマ・アピールは広島ビジョンを「核による抑止力と北大西洋条約機構(NATO)の核共有を正当化しただけの許しがたいもの」と厳しく批判した。原水協系の広島決議も「被爆地と被爆者を愚弄(ぐろう)し、断固として拒否する」とした。

 大会で登壇した若者の言葉も印象深い。「被爆者の心に触れたならば、核兵器を持つという選択はできないのではないか」。背景にあるのは広島サミットだろう。核保有国を含むG7首脳が原爆資料館を訪れ、被爆者とも面会したのになぜ、との失望が伝わった。

 米国から参加した被爆3世の若者は初の被爆地開催となったサミットについて、核廃絶への内容が乏しいと怒った。期待が高かっただけに裏返しの感情でもあるだろう。

 この若者は一方で、多くの人がヒロシマを知る契機になったともサミットを捉え、平和運動に携わる若者を増やしたいと意気込んでいた。被爆者の平均年齢が85歳を超える中、こうした若い芽をどう広げるか。二つの世界大会の手腕も試される時期を迎えている。(山本庸平)

(2023年8月9日朝刊掲載)

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