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CTBT機構準備委 ロバート・フロイド事務局長に聞く 核なき世界へ 多様な声一つに

 広島市の平和記念式典に出席した包括的核実験禁止条約(CTBT)機構準備委員会のロバート・フロイド事務局長が、中国新聞のインタビューに応じた。同条約の早期発効と、核実験と核兵器のない世界に向け「多様な年齢や人種、ジェンダーの人たちが声を合わせてほしい」と力を込めた。(小林可奈)

  ―核保有国の米国や中国などの批准が条約の発効要件ですが、まだです。各国の動きは。
 近年、批准は年間ゼロか1カ国だったが昨年は6カ国。今年はこれまで2カ国が批准し、さらに増える見通しだ。米中は条約署名は済ませており、核実験のモラトリアム(一時停止)を維持している。米国は上院の3分の2の賛成が必要で難題もあるが、米中が批准する日を待ちたい。

  ―米国も含めた先進7カ国(G7)は5月の広島サミットで核軍縮文書「広島ビジョン」をまとめ、CTBT発効を「喫緊」の課題としました。
 非常に喜ばしい。このような大胆な声明に同意する体制が首脳レベルで整ったことを大変うれしく思う。

  ―一方、北朝鮮の7回目の核実験への懸念も拭えません。可能性は。
 北朝鮮はCTBTに署名もしておらず、モラトリアムの約束をしていない。北朝鮮がいつ実験に踏み切るかは見通せないが、昼夜を問わず、いつでも実験を検知できるよう準備している。

  ―CTBTが未発効でも実質的な影響力を高めていくため、被爆地が果たせる役割は。
 惨禍を二度と繰り返してはならないと、世界の国々に訴える強い根拠を持つ広島と長崎の人々のメッセージはとても力強い。被爆地の責務をこれまでも、今後も果たしてくれると確信している。

包括的核実験禁止条約(CTBT)
 核爆発を伴う核実験を禁じる一方、臨界前核実験をはじめ、爆発を伴わない最先端の実験は対象外。1996年に国連で採択され、現在178カ国が批准。発効には条約交渉時に原子炉を持っていた44カ国全ての批准が必要だが、米国や中国など8カ国が未批准で、うちインド、パキスタン、北朝鮮はその前段階である署名もしていない。

(2023年8月15日朝刊掲載)

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