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被服支廠保存へ「強い思い」 中西巌さん死去 関係者ら惜しむ声

 広島市南区にある最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」の保存を訴え続けた市民団体「旧被服支廠の保全を願う懇談会」共同代表の中西巌さんが16日、93歳で亡くなり、関係者から惜しむ声が上がった。

 「広島にとって大切な人を失った。とても責任感のある方だった」。中西さんとともに懇談会共同代表を務めてきた切明千枝子さん(93)=安佐南区=は残念がった。

 15歳の時、学徒動員先の被服支廠で被爆した中西さん。軍都と被爆地の歴史を象徴する全4棟の保存を訴え、被爆体験の証言活動も続けた。

 被服支廠の見学会を開いている市民団体アーキウォーク広島代表の高田真さん(44)=中区=は「さまざまな証言をされ、立体的な視座を与えてくれた。功績は計り知れない」と悼んだ。

 広島県が所有する3棟の一部の解体方針を示した際は、中西さんが先頭に立って署名運動を展開した。県は2021年5月、3棟の耐震化を表明。残る1棟を所有する国も追随し、保存の道を開いた。

 懇談会副代表の多賀俊介さん(73)=西区=は「強い思いで活動し、県や国を動かした。活用が始まるのを見届けてもらいたかったが、私たちが思いをつないでいきたい」と話した。(河野揚、川上裕、宮野史康)

(2023年8月17日朝刊掲載)

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