×

連載・特集

大変じゃったね 広島サミットから3ヵ月 <下> 49人宿泊 尾道の旅館

若い警察官支え「大成功」

 尾道市中心部から北約12キロにある諸毛屋(もろけや)旅館。3代目の一藤(いちふじ)明子さん(71)は、広島市で5月19~21日にあった先進7カ国首脳会議(G7サミット)の前後15日間の奮闘を振り返る。サミットで警備に当たった群馬県警の49人が宿泊していた。

 多くが30歳前後。外出や館内での私語は最低限に慎み、緊張感がひしひし伝わってきた。「こんな若い子たちがサミットのために頑張っている」。息子夫婦とパートの計5人で一丸になって支えると誓った。

 朝7時に出かける警察官一人一人に「休憩時間に食べて」とおにぎりを手渡した。夕食には唐揚げ、とんかつなど食べ応えのある料理を提供した。午前2時の帰宅に合わせて温かい食事を用意し、その2時間後の出発に間に合うよう大急ぎで弁当をこしらえた日もあった。

 サミットが終わり49人が去る前日、お好み焼きを振る舞った。解放感から皆よくしゃべり、笑った。「私にとってもサミットは大成功」。宿の一角には、広島県警から贈られた真新しい感謝状が輝いている。(神田真臣)

街なかのカレー店

空腹救う25人分 誇り

 「あす昼、カレーを持ち帰りで25人分用意してほしい」。ウクライナのゼレンスキー大統領のサミット参加が明らかになった19日の夜。広島市中区三川町のカレー店「250円食堂 お祭り」に1本の電話が入った。

 よくある大口注文と思いきや、翌日にやって来た3人の服装で警察官と分かった。店を1人で切り盛りする中村完さん(43)は「提供される弁当では足りない、とこぼしていた。緊張続きで、おなかをすかせていたのだろう」と思い返す。

 広島県内の官民でつくる広島サミット県民会議は、警備に当たる警察官たちの弁当を1日最大約4万5千個と想定していた。市内の弁当事業者がフル操業で対応したが、それでも足りなかったとみられる。

 中村さんは「警備のお役に立てたのであればうれしい」と誇らしげだ。注文を受けた際のメモ書きを今も手元に残している。(小川満久)

宮島の包ケ浦自然公園

刺し網体験で息抜き 好評

 サミット前の3月中旬から約2カ月間、宮島(廿日市市)の包ケ浦自然公園は6都県の警察官の宿泊所になった。公園管理センターの副所長、岩崎竜三さん(59)は「激務の間の気晴らしになれば」と、同公園で人気の刺し網体験を提供した。

 徳島、静岡県警などが応じ、くじ引きになるほどの人気に。包ケ浦沖合の瀬戸内海に仕掛けた網にかかったカワハギやタイ、アイナメなどの収穫を楽しんだ。網には毎回100匹以上がかかり、バーベキューにしたという。「ありがとう」というお礼の声も届いた。

 最も多い時で約450人がキャビンなどに集団で寝泊まりし、交代で島内の警備などに当たった。岩崎さんは「非番の時ぐらいはリラックスして、しっかり楽しんでほしいとの思いだった」と話す。(永井友浩)

会場セキュリティー担当

時間制限の中 完遂「一安心」

 広島発祥でセキュリティーサービスのクマヒラ(東京)は、サミット会場の守りを担った。同じグループの熊平製作所(広島市南区)が製造したセキュリティーゲートを設置し、期間中は機器の故障に備えて24時間体制で待機した。

 セキュリティ企画室次長の這越(はえこし)克己さん(48)は、スタッフ約20人を指揮。ゲートの設置は2016年の三重県での伊勢志摩サミットの2倍の約20カ所になった。会場が南区元宇品町と平和記念公園(中区)周辺に分かれていたためだ。

 主会場のグランドプリンスホテル広島(南区)のゲート設置作業が印象に残っている。他の機材搬入に差し障るとして急きょ夕方から取りかかったが、何とか当日中に終えた。「時間制限の中、プレッシャーを感じながらの仕事だった。無事に終わり一安心」とかみ締めている。(服部良祐)

(2023年8月19日朝刊掲載)

年別アーカイブ