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社説・コラム

朝凪(あさなぎ) 継いでいく 祖母の祈り

 何年ぶりだろうか。原爆慰霊碑に手を合わせたのは。6日の夕暮れ時、仕事終わりに立ち寄った。平和記念公園には幾度となく来ているのに、取材者として第三者的に見るだけになっていたと反省した。

 思い立ったのは、昨年夏に95歳で亡くなった祖母の名が原爆死没者名簿に載り、この日、慰霊碑に奉納されたから。

 18歳の時、当時の己斐国民学校で被爆した祖母。爆風の中で「神様」と叫んで救いを求めたこと、友人が持っていた傘で黒い雨をしのいだこと。生前、何度か体験を話してくれた。

 ただ、私の子ども2人に語ってもらうことはかなわずじまいだった。被爆3世の当事者として祖母の体験を自分が引き継がねば。暗くなっても人波が絶えない公園を歩き、心に誓った。 (報道センター社会担当・永山啓一)

(2023年8月24日朝刊掲載)

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