×

ニュース

「8・6」と「9・11」で家族が犠牲 広島の伊東さん体験伝える 

■記者 川上裕

 原爆で兄を失い、2001年9月の米中枢同時テロで長男を奪われた伊東次男(つぎお)さん(74)=広島市安芸区=が13日、中区の平和記念公園を訪れた米国・ニューヨーク近郊の中、高校の教員10人に体験を語った。

 伊東さんは、教員たちを慰霊碑に案内した後、原爆資料館で証言した。銀行員だった長男和重さん=当時(35)=の遺品のスーツに身を包んで話し始めた。

 息子の遺体がまだ見つかっていない事実、ニューヨークに行って写真を手に病院を捜したが見つからなかったことを伝え、「いつも妻と仏壇で手を合わせている。その姿はまるで、兄を失ったかつての両親の姿と重なる」と明かした。

 兄の宏さんは広島一中(現国泰寺高)で被爆し、12歳で命を落とした。伊東さん自らも被爆者。「戦争をなくしたい気持ちは日増しに強くなっている。核兵器に限らず、どんな武器も廃絶しなければいけない」と訴えた。

 聞き入った中学校教員のダリエン・メージャースさん(59)は「平和への強い思いを感じた。授業で生徒に伝えたい」と誓っていた。一行は、米国の民間団体主催の研修旅行で来日。この日は、折り鶴に白血病からの回復を託し、被爆から10年後に死去した佐々木禎子さんの兄、雅弘さん(67)=福岡県=とも交流した。

(2009年7月14日朝刊掲載)

年別アーカイブ