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反戦反核訴えた先人の足跡たどる 原爆・平和関連書籍 この1年 サミットの記録などヒロシマ伝える

 ロシアによるウクライナ侵攻が続く中で迎えた被爆78年。この1年に出版された原爆・平和関連の書籍は、反戦反核を訴え続けた画家や文人の足跡をたどった評伝が目立つ。5月に広島市内で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)にちなんだ書籍も相次いだ=敬称略。(桑島美帆)

画家や詩人

 広島市立中央図書館(中区)などによると、昨年8月から今年7月までに出版された原爆・平和関連の書籍は約90冊に上る。詩人でもあった画家四国五郎(1924~2014年)の長男光は「反戦平和の詩画人 四國五郎」(藤原書店)を出版した。シベリア抑留から帰還後、「戦争の醜さ」と「平和の尊さ」を表現し続けた父親の作品や日記を読み解き、その素顔に迫る。

 学芸員岡村幸宣は、伝記「丸木俊 『原爆の図』を描き世界に戦争を伝える」(あかね書房)を刊行。このほか、地元出版社の溪水社(中区)から松本滋恵著「行動する詩人 栗原貞子」や、長崎の被爆作家の生涯を叙事詩のようにつづった天瀬裕康著「林京子の反核世界」も出ている。

 G7の被爆地開催に合わせ、ジャーナリストの三山秀昭は「世界のリーダー185人 ヒロシマ、ナガサキで発した『言葉』」(南々社)を出版。中国新聞社は、ウクライナのゼレンスキー大統領の広島入りなど歴史的瞬間を捉えた報道写真集「G7広島サミット~被爆地から世界へ~」を発売した。

被爆者の証言

 被爆者の平均年齢が85歳を超える中、92歳の被爆者梶本淑子は「14歳のヒロシマ」(河出書房新社)に78年前の凄絶(せいぜつ)な体験をつづった。86歳の森重昭、81歳の佳代子夫妻の半生を収めた「原爆の悲劇に国境はない」(副島英樹編、朝日新聞出版)も力作だ。

 「原爆『黒い雨』訴訟」(田村和之、竹森雅泰編、本の泉社)や「原爆報道の研究」(小池聖一編著、現代史料出版)など、地元研究者らによる史実の掘り起こしも続いた。一方、45年10月の広島と長崎市内の惨状を撮影した故林重男の著書を増補・改訂した「原爆写真を追う 東方社カメラマン林重男とヒロシマ・ナガサキ」(林重男、井上祐子著、図書出版みぎわ)も貴重な記録だろう。

新風の児童書

 新たな作風で挑んだ児童書も印象に残る。「ぼくはうそをついた」(西村すぐり著、ポプラ社)と「かげふみ」(朽木祥著、光村図書出版)の作者はいずれも被爆2世。親や親族たちから聞いた証言を基に、子どもたちの想像力をかき立てる物語としてよみがえらせた。中澤晶子は「ワタシゴト 14歳のひろしま」シリーズ完結編となる「いつものところで」(汐文社)を刊行した。

 昨年に創立130周年を迎えた中国新聞社は、「まんが被爆地の新聞社」を出版。今年の原爆の日には、文化面の連載を基にした「明子さんのピアノとパルチコフさんのヴァイオリン」(西村文、廣谷明人、二口とみゑ著、ガリバープロダクツ)が書籍化された。

(2023年8月26日朝刊掲載)

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