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社説・コラム

「平和を世界に発信できる」 広島市と世銀結んだ意義 財務省の山本課長補佐に聞く

 広島市が世界銀行と連携するパートナーシップを結んで9月で半年になる。引き合わせたのは、広島市中区出身で財務省総合政策課の山本深課長補佐(38)。連携の意義を「平和の大切さを世界に発信できる」と説く。高齢化が進む中でのまちづくりや市内の路面電車網の整備といったノウハウの「海外輸出にもつながる」と期待している。(山瀬隆弘)

  ―どんな経緯ですか。
 中途採用で2022年春に入省し、その年の7月に世銀の担当となり、新たな取り組みを考えた。ウクライナ侵攻が続く中で、23年5月には被爆地の広島市で先進7カ国首脳会議(G7サミット)がある。ホップ・ステップで平和を考える機会をつくろうと考え、3月のパートナーシップと中区でのシンポジウム開催を起案した。

  ―その後の動きも聞かせてください。
 まず世銀へ持ちかけ、興味があるとの回答を得た。そこで前職の縁も使って広島市などへ連絡、調整した。広島市は被爆からの復興を世界に伝える機会になる。岸田文雄首相にもシンポで出すメッセージを求めた。ウクライナには世銀が働きかけ、副大臣が来た。世銀を通じた日本の国際貢献への認知度が高まった。

  ―パートナーシップへの期待はどうですか。
 世界から見ると広島は学びがいがある都市だ。持続可能なまちをどうつくるか。整備費が安く環境負荷も小さい路面電車も学びの種。広く知ってもらえばノウハウの輸出というビジネスになる。

  ―祖父が創業し、伯父が社長を務める進物販売の大進本店(中区)執行役員からの転身ですね。
 新型コロナウイルス禍で大進本店の経営が厳しくなった20年8月、勤めていた大手商社から移った。コロナ禍を切り抜けた際、小学生の時からの「国の仕事をしたい」との夢をかなえようと、試験を受けた。課長補佐級としては財務省第1号の中途採用となった。

  ―今後の意気込みは。
 平和記念公園の「原爆の子の像」のモデルとなった佐々木禎子さんが通った幟町小(中区)は私の母校。被爆者の祖母からも話を聞いていた。財務省が担当する幅広い分野で、平和に貢献する。中途採用者としての発信にも力を入れる。多彩な経験をした人が省内で活躍すれば、日本がよりよくなると信じている。

 ≪略歴≫幟町小、広島学院中・高を経て慶応大経済学部卒。2009年三菱商事。英国の食品製造販売会社への出向などを経験した。20年8月大進本店執行役員経営企画部長。22年財務省。23年7月から現職。

世界銀行
 貧困の撲滅などを目指す国際開発金融機関。本部は米ワシントン。国際復興開発銀行(IBRD)国際開発協会(IDA)など5機関で構成する。日本のIBRDへの出資額は米国に次ぐ世界2位。広島市とは3月14日にパートナーシップを結んだ。

(2023年8月30日朝刊掲載)

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