核禁条約 「全世界の利益」 ICAN新事務局長 メリッサ・パーク氏に聞く
23年9月7日
日本は締約国会議参加を
非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))の新事務局長に1日付で就任した元オーストラリア国際開発相のメリッサ・パーク氏が6日、中国新聞のインタビューにオンラインで応じた。核兵器禁止条約への支持は「全世界の利益」とし、日本をはじめとする各国の参加を訴えた。(小林可奈)
―核軍縮の問題に関心を持った経緯は。
きっかけは国内で核廃棄物投棄を阻止する運動に参加した1990年代。後に法律家として国連に勤め、対人地雷などの非人道兵器の被害と向き合った。パレスチナ自治区ガザでは8月、空爆を受けている子どもたちが原爆を受けた広島の犠牲者を悼んでいた。その姿が心に突き刺さった。
大臣や議員の職歴、国連での経験を生かし、核兵器をなくすため力を尽くしたい。各国政府や国会議員との交渉は事務局長の重要な役割だ。
―ICANの活動をどう発展させますか。
気候変動問題への対応や生物多様性の保全といった世界的な取り組みと連携したい。核兵器の近代化や増強に使われる巨額の資金の実態を明らかにする活動も強化する。
―禁止条約の第2回締約国会議が今年末に控えています。
条約未加盟国にオブザーバー参加を促していく。(米国の核兵器に依存する)オーストラリアは昨年の第1回締約国会議と同様、今回も参加するだろう。他の国にも動きが広がってほしい。
―日本は禁止条約に背を向けています。
岸田文雄首相は核軍縮への尽力を表明し、先進7カ国首脳会議(G7サミット)を広島市で開いた。オブザーバー参加を求める被爆者の声に耳を傾けてほしい。廃絶を目指す建設的な議論を知る機会になるはずだ。
―被爆地の役割は。
原爆の惨禍を経験し、語ることのできる被爆者は、重要な存在だ。被爆者の体験や証言があったからこそ、世界が行動を起こし禁止条約の実現につながった。長崎とともに、広島を初めて訪問することを心待ちにしている。日本政府の関係者との面会も果たしたい。
(2023年9月7日朝刊掲載)